Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
申請者は、第一原理計算により、エキシトンの生成と解離、解離により生成したキャリアの拡散過程といったエキシトンダイナミクスについて、ドナーで生成したフレンケル型エキシトンは界面で電荷移動型エキシトンとなり、電子-正孔距離が変換効率、短絡電流密度と相関を有することを見出した。本研究では、有機薄膜太陽電池界面における電荷移動型エキシトンの解離と生成キャリアの動的過程について、電荷移動型エキシトンを電子ポーラロンと正孔ポーラロンの対、すなわちバイポーラロンと捉え、バイポーラロン状態のHuang-Rhys因子、非断熱結合定数を第一原理的に評価し、電荷移動型エキシトンダイナミクスの理論的研究を行う。
PDCBT/BTAx D/A複合体は、短絡電流密度(JSC)と光電変換効率(PCE)の大きさに相関があること報告がされている。この相関を考えるべく、非断熱過程によるCT状態からの再結合のメカニズムが重要であると考えた。つまり、CTエキシトン状態における動的過程を解析するために、Frank-Condon シミュレーションを行いエキシトンーフォノン結合の強さを示す Huang-Rhys因子を算出した。この結果、PDCBT/BTA3複合体は、PDCBT/BTA1複合体よりも高波数側でより強いHuang-Rhys (HR)因子が現れた。従って、フェルミの黄金律に基づくと、周波数が小さいほど状態密度が大きくなり、その結果遷移確率が大きくなる、つまり非断熱プロセスが起こりやすくなることがわかった。従って、HR解析によると、PDCBT/BTA1は、PDCBT/BTA3よりも非放射再結合を起こしやすく、JSCが低くなると考える。次に、エキシトンの解離過程について考察した。励起状態での安定状態における電荷移動距離に着目すると、PDCBT/BTA3 の電荷移動距離が長いことから、エキシトンが解離しやすいと考えられる。また、緩和過程では、PDCBT/BTA3 のエネルギー変化は小さく電荷移動距離が大きい。ΔEHOMO(D)-LUMO(A)とVOCとの差はPDCBT/BTA3の方が大きいことから、PDCBT/BTA3のVOC損失が大きいことがわかった。VOCの損失は CT状態での再結合によるものなので、PDCBT/BTA3は CT状態で非放射緩和を受ける可能性が高い。これは、PDCBT/BTA1 の CT状態がより非断熱的に基底状態に遷移し、PDCBT/BTA3は低い再結合率によってJSCが大きいこと、緩和によるエネルギー損失が大きいことを示していると考える。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本課題をこなすことによって、理論研究の礎を築くことができた。また、量子化学計算を用いることによって、ドナーアクセプター界面における振電相互作用を解明することができた。この成果について、論文執筆、招待講演、受賞など、アウトプットもできている。おおむね順調である。
密度汎関数法を用いて、非フラーレン型アクセプターNTz分子は分子間電荷移動によって分極が生じフッ素置換をすることで分子内分極が大きくなることを報告した。このように、分極が支配的な極性物質ではシフト電流の発生が期待でき、分極電流や指向性を示すのではないかと予測される。また、シフト電流を発現する系では、光励起に際して電子雲の重心が実空間シフトする、すなわちワニア型エキシトンが生成していると考えられる。NTzでみれる、分極を強めた有機太陽電池材料系におけるシフト電流光起電力効果発現の可能性を理論的に検討する。具体的には、極性の強いドナー分子とNTzの複合体について、時間依存密度汎関数法により、電子励起に伴う電子雲の重心の実空間シフトを解析する。
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All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (12 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results, Invited: 4 results) Remarks (2 results)
The Journal of Chemical Physics
Volume: 159 Issue: 4 Pages: 044307-044307
10.1063/5.0150140
https://mcm-www.jwu.ac.jp/~muraoka/index.php
https://www3.jwu.ac.jp/sdgs/articles/detail_17.html