Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
弱い相互作用が働く集積系は‒RTlnK = ΔG = ΔH-TΔSとして、エンタルピーとエントロピー項に分けられる。一方、ΔG = ΔH-TΔSの式は、= ΔF+PΔVに変形でき圧力の関数であることを示している。この事実は、広範囲な平衡系(熱力学)や遷移状態(速度論)において複雑なエントロピー変化を考慮しなくてもよい制御因子として、外部刺激である圧力が魅力的な代替候補であることを意味している。本研究概要は、従来のエンタルピーやエントロピー制御法を超えて「外部刺激としての圧力(静水圧)による共役分子の動的な物性制御」を追求することである。
今年度は、高密度共役科学に必須と考えられる「集積のエントロピー項」や「ナノ空隙」を外部刺激によって能動的に制御する、すなわち共役分子の“dynamic control”を目標とし、「静水圧による共役分子の動的な高密度化とそのキラー計測」を目論んだ。実際に幅広い分子群の静水圧計測を行い、多くの結果が出たが、ここでは、ポルフィリンクリップについて詳述する。静水圧下での蛍光スペクトルにおいて、クリップ誘導体1では静水圧印加によって、436 nm付近に観測されるポルフィリンのS2発光と605 nm付近のS1発光の単調な減少が観測された。一方クリップ誘導体2では、クリップ誘導体1と同じくS1発光は減少していくが、S2発光が増加するといったレシオメトリックな挙動が観測された。この現象はポルフィリンを修飾している足場の柔軟性に起因しており、より柔軟なリンカーの誘導体では加圧に伴い分子内のポルフィリン間の距離が近くなり、分子内で会合体が形成されたためであると考えられる。これら二つの誘導体の静水圧蛍光スペクトルから、圧力に対して蛍光強度比をプロットしたところ、非常に良い相関関係が見られ、蛍光強度比によって静水圧の定量化を達成した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
当初目的としている柔軟な分子群についての計測は鋭意継続中ではあるが、本質的なデータ取得には成功している。また2023年度の成果報告とあわせて、残り1年の期間を考えると、「おおむね順調に進展している」と結論づけられる。
今後は、高密度物質のモデルマテリアルであるキラルフルオレンやポルフィリンポリマーへと展開していく。これらの分子は、基底状態と励起状態での挙動が大きく変わると予想されているので、光照射下での静水圧計測もあわせて行っていく予定である。
All 2024 2023
All Journal Article (6 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 6 results, Open Access: 2 results) Presentation (14 results)
Polym. J.
Volume: 56 Issue: 5 Pages: 473-480
10.1038/s41428-024-00889-7
ACS Applied Polymer Materials
Volume: 5 Issue: 3 Pages: 2254-2263
10.1021/acsapm.2c02251
Chemical Science
Volume: 14 Issue: 12 Pages: 3293-3301
10.1039/d3sc00312d
Volume: in press Issue: 5 Pages: 3653-3660
10.1021/acsapm.3c00315
Chemical Communications
Volume: 59 Issue: 63 Pages: 9595-9598
10.1039/d3cc02990e
ACS Macro Letters
Volume: 12 Issue: 10 Pages: 1389-1395
10.1021/acsmacrolett.3c00427