Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では、金属と配位子の間での配位結合の形成を駆動力として、二枚の多環芳香族分子をより近接した位置に積層できるような一連の方法論の確立を目指す。配位結合の結合エネルギーは、金属イオンと配位子の組み合わせによっては共有結合並みの大きさとなるため、これを駆動力とすることでより大きな近接効果が期待される。そこで、配位結合によって二枚のπ平面が近づくような設計の大環状配位子を新たに設計・合成し、金属イオンとの錯形成によって生成する錯体の構造や物性を明らかにする。
一般に、多環芳香族炭化水素やグラファイトの層間には、分散力やπスタッキング相互作用が普遍的に働く。例えば、グラファイトの層間距離は3.4 Åである。この距離は、特別なことをせず、自然に積層構造が形成されたときの距離に相当する。芳香環をこの距離より近い層間距離で積層させるためには、ポテンシャル曲面の上りかけの少し不安定な位置で二つのπ平面を固定する必要がある。この不安定化(反発)を凌駕する十分な相互作用や外的な摂動があれば、このように近接した位置での積層が可能となると予想される。本研究では、salen配位子と金属の錯形成によって強制的に二つの芳香環の距離が近づくような設計の分子を合成し、その積層距離を評価することとした。salen配位子の二つのヒドロキシ基のオルト位にπ平面(ペリレンビスイミド)を導入した分子を合成した。前駆体となるペリレンビスイミド置換サリチルアルデヒドは、ホルミル基およびヒドロキシ基を保護した3-アミノサリチルアルデヒドとペリレンイミド誘導体の反応と、その後の脱保護により合成した。続いてこれをエチレンジアミンと反応させてπ平面置換salen配位子を合成した。1H NMRスペクトルにおいて、この配位子中のペリレンビスイミドプロトンは一般的なペリレンビスイミド誘導体と同様の化学シフトに観測されたが、これをニッケル(II)と錯形成させたところ、高磁場シフトともにシグナルのブロード化が観測され、積層構造の形成が確かめられた。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
当初予定していた構造のπ平面置換salen配位子を合成し、ニッケル(II)錯体へと変換することができたため。
合成したπ平面置換salen配位子およびそのニッケル(II)錯体について、面間距離を各種スペクトルにより評価し、その積層構造の詳細について明らかにする。
All 2024 2023
All Journal Article (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 2 results)
Science Advances
Volume: 9 Issue: 44
10.1126/sciadv.adj5536
Nature Communications
Volume: 14 Issue: 1 Pages: 6834-6834
10.1038/s41467-023-42493-y