超秩序構造に対するナノビームX線を用いた時間分解回折構造研究
Publicly Offered Research
Project Area | Progressive condensed matter physics inspired by hyper-ordered structures |
Project/Area Number |
23H04104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (II)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片山 尚幸 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50623758)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
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Keywords | 超秩序構造 / 量体化 / ダイナミクス / 時分割測定 / 量体化分子 / 放射光X線回折 / 局所揺らぎ / ナノビーム |
Outline of Research at the Start |
層状三角格子系LiVS2では、低温でバナジウムが自発的に集合した三量体「分子」の形成を生じる。高温に上げると、この三量体分子は消失し、レギュラーな三角格子が復活するものと考えられてきたが、最近の我々の研究により、このバナジウムの三角格子の内部において、数100nm程度の相関長を持つジグザグ鎖状の分子が出現し、配向を変えながらゆっくりと揺らいでいることがわかってきた。三角格子の中に潜むジグザグ鎖状の超秩序構造が示すダイナミクスと、温度変化に伴う相関長の変化を、時分割ナノビームX線回折法を用いて明らかにすることが本研究の目的である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、層状LiVS2に創出する超秩序構造のダイナミクスをナノビームX線を用いた回折実験で観測することを目的としている。超秩序構造は3種類の配向をもっており、各々のドメインが異なる位置に超格子ピークを生み出す。これら3通りのパターンは時間依存して変化する特徴をもつことから、これらのパターンの時間変化に応じた超格子ピークの「きらめき」が回折像に現れるはずである。SPring-8 BL36XUにおいて、100nmオーダーまで絞ったナノビームX線を照射し、100msecの時間幅で数100枚の回折像を取得する実験を行った。得られた一部の回折像には、強度に揺らぎを持つ超格子ピークが観測され、目的とするダイナミクスの揺らぎが観測できた。しかしながら、試料によっては強度の揺らぎが現れない超格子ピークも存在した。これは、試料厚みや層間のLiイオンの充填量など、いくつかの要因に起因していると考えられる。今後はダイナミクスを確実に捉えることができる実験条件を考案し、再実験を計画したい。
また、岡山大学グループとの共同研究で行ったBi2Rh3Se2の回折実験では大きな展開があった。250 K付近で磁化率の変化を伴う電気抵抗率の増大を示す物質である。CDW転移と議論されているが、その起源は構造面から明らかにされてはいなかった。放射光X線を用いた単結晶構造解析により、結晶内部のBi2-Rh4というごく一部のユニットにおいてのみ、顕著な原子変位が確認された。従来のCDWで期待される格子全体の変調とは様相が異なっており、今後は領域内外の理論研究者との共同研究を経て、早期に論文化することを目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノビームX線回折実験を実施し、一部の試料で超秩序構造のダイナミクスを観測することに成功したことから、初年度の当初目標は達成できたと考える。一方で、コントロールできない試料依存性があり、ダイナミクスの観測条件が不確かである点が今後の課題として残った。また、領域内共同研究から、Bi2Rh3Se2という当初予定していなかった物質系に対しても構造研究に取り組み、Bi2-Rh4という局所的なユニットの変調が相転移の起源であることを突き止めた。既に領域内外の理論研究者と共同研究を始めており、また、物質には多様性があることから、実験研究にも次年度の更なる成果に向けた展開性が期待できる。以上のような状況から、(2) おおむね順調に進展している、が適切であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
LiVS2の超秩序構造のナノビームX線回折実験については、試料クオリティのさらなる向上が求められる。また、実験中の試料の水和による品質劣化を懸念して、実験条件の見直しが必要となる。これらの課題に2024前期中に取り組み、2024後期に再実験を予定したい。Bi2Rh3Se2については、より高品質な試料を準備し、再実験を行いたい。温度依存性を正確に測定することが必要と考えている。また、類縁物質のBi2Rh3S2の構造解析にも取り組み、Bi2Rh3Se2との比較を行いたい。2024年度に新たに予定しているTaTe2の蛍光X線ホログラフィー実験も2024年度のテーマとなっている。高温で現れる二量体化に向けた超秩序構造の同定を目標としており、6月のSPring-8ビームタイムにて測定を予定している。以上が今後の研究の予定となる。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)