Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
省エネの鍵となる半導体パワーデバイスにとって最も重要な基礎技術は、半導体界面の制御であり、絶縁膜と半導体との界面における原子構造の制御がデバイス性能向上の要となる。しかし、絶縁膜と半導体の界面は、非晶質と結晶の複雑界面であるため、既存の計測手法では原子配列を観測することができない。そのような界面原子層は、完全な無秩序ではない超秩序構造を持っていると予測される。そこで、本研究では実測に基づく界面原子構造を電気特性やプロセス条件と結びつけ、電気的欠陥となる超秩序構造を理解することで、界面制御に新たな基盤技術を構築する。
ゲート絶縁膜と窒化ガリウム(GaN)の界面に対する熱処理条件と界面原子配列の相関を明らかにするため、熱履歴による界面酸化層の原子構造変化を光電子ホログラフィによって評価した。絶縁膜であるSiO2は、スパッタまたは原子層堆積法により形成し、SiO2/GaN構造を作製した。作製した試料に対して、3種類の熱処理条件(成膜直後熱処理無、600度熱処理、800度熱処理)を実施した。また、比較試料としてSiO2を成膜していないGaN基板を用意した。界面原子配列は、SPring-8のBL25SUに設置してある高分解能阻止電場型電子エネルギー分析装置を用い、Ga 3dの光電子ホログラムを計測することで評価した。Ga3dのXPSスペクトルを基板由来のGa-N結合と界面酸化層由来のGa-O成分に分離し、各成分で光電子ホログラムを求めた。光電子ホログラムの解析結果から、SiO2を成膜していないGaN基板試料ではGaN表面の自然酸化に起因したホログラム像が得られ、1原子層程度の秩序酸化ガリウム構造が存在することが明らかとなった。この秩序酸化ガリウム構造層は、SiO2成膜した際に成膜ダメージによって一部結晶構造が乱れるが、600度熱処理により酸化ガリウム構造の秩序性が回復することが明らかとなった。一方で、800度熱処理ではGa原子がSiO2への熱拡散し、酸化ガリウム層が分解する傾向がみられた。以上の結果から、SiO2/GaN界面の熱処理プロセスとして、600度が界面のプロセスダメージを回復するための重要な温度であり、本研究によりGaNパワーデバイスの特性改善に向けた重要な知見が得られた。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
絶縁膜と窒化ガリウム界面の極薄酸化ガリウム層に対して、光電子ホログラム技術を利用することで、これまで明確に理解されていなかった酸化ガリウム層の原子配列を解明することに成功した。また、作製時のプロセスダメージや熱履歴が酸化ガリウム層の秩序原子配列に与える影響についても明らかにすることができた。
2023年度の研究を通じて、ゲート絶縁膜とGaN界面の酸化ガリウム層に対して、熱履歴に伴う構造変化を観測することができ、ゲート絶縁膜と半導体界面の欠陥準位や固定電荷低減の物理機構を理解するために重要な界面の秩序構造に対して有用な知見が得られた。2024年度は、この成果を基盤に電気的欠陥との相関解明を進めるとともに、大規模趣味レーションなど理論的アプローチと融合し、半導体界面制御技術を発展させる。絶縁膜には、原子層堆積法により形成するSiO2, Al2O3などを用いる。作製した試料に対して、容量電圧測定から界面準位密度を計測する。また、成膜条件や熱処理条件を変更することで、界面欠陥密度の異なる試料を作製する。一方、光電子ホログラムの解析から得られた界面原子配列データを基に、複雑界面シミュレーションなどの理論計算を実施し、「界面原子配列」と「電気的欠陥密度」との関連性から電気的欠陥の起源とその原子構造を解明し、欠陥を低減する界面制御技術を構築する。
All 2024 2023
All Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)