Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究課題では、超短パルス光の波面制御技術を応用した微小領域での時間分解過渡吸収法の計測系を構築する。まず、透過行列による散乱体中での超短パルス光の集光とビームスキャンニングの技術開発を行う。その後、ポンプ光を光学チョッパーで変調することで、ポンプ光が集光されている場合とされていない場合の画像をプローブ側のカメラで取得する。過渡吸収法では、信号の大きさはポンプ光によって誘起されたプローブ光の強度変化を検出するため、集光されている必要はないという利点がある。微小空間領域での測定実現のため、様々な要素技術を発展させることで、時間分解過渡吸収イメージング法の確立を目指す。
光学的に不均一な媒質をレーザー光が透過する際、散乱が起こり、ある特定の場所に集光することが非常に困難となる。このため、散乱過程は分光法や微小領域でのイメージングにおいて大きな障害となり、その適用は困難であると考えられてきた。本研究では、散乱体透過後の微小領域での時間分解過渡吸収(ポンプ‐プローブ)法の開発を目的とする。今年度は原理検証のための実験を行った。実験ではポンプ光として、800 nmの超短パルス光を用いた。また、プローブ光は800 nmのパルス光をサファイア板に集光して発生させた白色光を用いた。ポンプ光とプローブ光は同軸に重ね、焦点距離100 mmのレンズでサンプルに集光した。散乱体にはホログラフィック拡散板を用いた。サンプル面でのポンプ光、プローブ光の散乱パターンをCMOSカメラを測定した。まず、ポンプ光の散乱体透過後の透過行列を測定した。透過行列の位相共役を計算し、ポンプ光の波面制御を行うことで、散乱体透過条件下において、ポンプ光をサンプル中のある1点に集光した。その後、散乱体を透過したプローブ光を用いて、IR140メタノール溶液の過渡吸収信号の検出を試みた。その結果、波面制御によりポンプ光を集光した場所で過渡吸収信号の増大を観測することができた。また、バックグラウンドとしてポンプ光の散乱による弱い過渡吸収信号も観測された。現在、波面制御による過渡吸収信号の検出感度の最適化を行うために光学系や測定プログラムの改良を進めている。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
これまでの研究において、通常のレンズを用いた光学系での原理検証実験を行った。散乱体透過条件下でポンプ光の波面制御を行うことにより、ある特定の場所での過渡吸収信号の増大を観測することができ、提案手法の有用性を確認することができた。このため、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
現在、対物レンズを用いた光学系を構築中であり、今後、微小領域での実験を行う予定である。また、散乱体透過後の過渡吸収信号の検出の高感度化も併せて行い、提案手法の長所、短所を明らかにしていく予定である。
All 2024 2023
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 2 results)
The Journal of Chemical Physics
Volume: 158 Issue: 13 Pages: 134510-134510
10.1063/5.0139133