Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
脳発達期には神経軸索の集まる白質部分に、栄養因子を分泌するミクログリアの集団が集積し、神経回路形成をサポートする。しかし、この現象は盛んな神経回路形成が生じる脳発達期に限定的で、生後早期のうちにこのような神経保護性のミクログリアは消失する。本研究では、成長に伴うグリア細胞の性質変容が、脳や各種臓器の機能獲得を媒介するメカニズムを解明することを目指す。
ミクログリアは、加齢や疾患など様々な原因で傷ついた神経軸索の周りに集積し、炎症や貪食による二次的な神経障害を引き起こす。またミクログリアは、生理的な脳機能にも重要な役割を持つことが注目され始めている。これまでに、生後まもなく、神経軸索の集まる白質部分に栄養因子を分泌するようなミクログリアの集団が集積し、神経回路形成をサポートすること、そしてその分子機序が明らかになった。一方で、このような神経保護的な作用を有するミクログリアが脳内に集積するのは、盛んに神経回路が形成されている時期に限定的であり、早い段階で消失する。なぜ、成長とともにその神経保護作用が失われていくのか、その意義やメカニズムは未だ不明である。近年の1細胞レベルの解析から、成長とともにミクログリアの性質が遺伝子レベルで変化していくことが報告されている。また、次世代シークエンサーの技術革新や普及により、ヒストン修飾など直鎖状のゲノムに対する修飾のみならず、ループ構造のように立体的なクロマチン構造が、包括的な遺伝子発現調節のために重要であることが広く認識されつつある。本研究では、成長過程を通じたクロマチンの三次元的な構造の変化が、ミクログリアの性質変化に与える影響と、それが脳全体の発生・発達を介在する機序について明らかにすることを目指す。本年度は、RNA-seqを実施し、発現変動遺伝子を同定するとともに、クロマチン構造の解析を進めた。今後、データ解析を進め、神経保護性のミクログリアの分子基盤となるクロマチンの立体的な構造変化を明らかにする。これにより、成長に伴うグリア細胞の性質変容が、脳や各種臓器の機能獲得を媒介するメカニズムを解明することを目指す。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
これまでの研究から、栄養因子IGF-1を分泌するミクログリアは、生後5日目に白質周囲への集積が最も顕著になり、生後14日目頃に消失することがわかった。また、近年、アルツハイマー病などの神経変性疾患で、グリア細胞のクロマチンの立体的な構造が壊れることが報告されている。病態下のグリア細胞では、エンハンサーとプロモーターの間に形成されるクロマチンループ構造が破綻し、遺伝子発現が変化することが示された。このような知見から、グリア細胞のクロマチン状態の変化が、神経回路の維持や、正しい脳機能の発現に重要であることを示唆している。一方で、クロマチンの立体的な構造変化が、生後のミクログリアの生理的な機能の変化にどのように関わるのか、その詳細は十分に明らかでない。そこで、本研究では、脳発達期に出現するミクログリアの神経保護作用を導くクロマチンの立体的な構造変化を明らかにすることを目指した。本年度は、RNA-seqを実施し、発現変動遺伝子を同定するとともに、クロマチン構造の解析を進めた。
脳発達期には神経軸索の集まる白質部分に、栄養因子を分泌するミクログリアの集団が集積し、神経回路形成をサポートする。しかし、この現象は盛んな神経回路形成が生じる脳発達期に限定的で、生後早期のうちにこのような神経保護性のミクログリアは消失する。今後は、クロマチン構造解析を継続する。公開ソフトウェアを用いてシークエンスデータを解析し、それぞれの群でクロマチン間相互作用 (クロマチンループの根本にあたる部分)がゲノム上のどの領域に位置するのか、同定する。また、各群に特異的、両群に共通のクロマチン間相互作用を解明する。以上により、神経保護性のミクログリアの分子基盤となるクロマチンの立体的な構造変化を明らかにする。これにより、成長に伴うグリア細胞の性質変容が、脳や各種臓器の機能獲得を媒介するメカニズムを解明することを目指す。
All 2024 2023
All Presentation (2 results) (of which Invited: 2 results)