Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
脳内には神経細胞とほぼ同数のグリア細胞が存在し、その中でも最多数を占めるアストロサイトは、神経伝達を担う要であるシナプスと密接に関わり、脳機能を制御する。だが、そのメカニズムは未解明である。本研究では、アストロサイトが呈する複雑に分岐した突起に着目して、その突起がより特異的にシナプス入力を区画化して情報処理を担うかどうかを突き止める。そのために、異なるシナプスの活性化が引き起こすアストロサイト突起の活動を新たなプローブ開発をもってマッピングする。さらには、アストロサイトによるシナプス情報の最小動作単位を同定して、神経回路活動の入力情報処理を担うアストロサイトの構造基盤のデコーディングを目指す。
脳内には神経細胞とほぼ同数のグリア細胞が存在し、その中でもアストロサイトは最多数を占める。アストロサイトは脳内環境を整備して受動的に神経回路活動を支える他、能動的にも脳機能を制御して、その影響は動物の様々な行動へも及ぶことが最近次々と見出されている。とくにアストロサイトは多数の突起を呈し、その末端のPAP(perisynaptic astrocyte process)を通じて神経伝達を担う要であるシナプスと密接にコンタクトする。本課題ではマウス海馬を使い、個々のアストロサイトPAPによるシナプス情報統合の基本的なメカニズムを明らかにすることを目的としている。特に、アストロサイトPAPは、規則的なシナプス入力構造を持つ神経回路と相互作用することで、シナプス活動を整然と区画化して情報を統合する、という仮説の検証を行うために、活性化したPAPを標識するカルシウムプローブを開発した。先ずはニューロンとアストロサイト混合の海馬初代培養を使い、シナプス刺激およびアストロサイトの脱分極に対するカルシウムプローブのシグナル応答特性を解析した。次にAAVベクターへプローブをパッケージして、新生児横静脈洞注入法を用いてP0-P1マウス脳をAAVで感染させ2週齢~6週齢のマウス脳を採取して免疫組織染色実験によるプローブの発現を確認するとともに、活性化したアストロサイトPAPにおけるプローブの有効性を確認した。今後はこの新しいプローブを使い、アストロサイトPAPによるシナプス入力情報処理機構の理解を深めて、海馬回路が担う学習メカニズムへの新たな知見の提供を目指す。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。