Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
脳はグリア細胞と神経細胞によって恒常性が維持されており、脳組織が損傷した場合には、いち早くグリア細胞が応答して脳組織の修復を担う。本研究課題では、脳組織の虚血壊死(脳梗塞)の際に、脳修復を担うミクログリア、神経細胞に着目して、修復に関わった脳細胞の運命を明らかにする。グリア細胞、神経細胞を脳から単離した一細胞・全細胞レベルの遺伝子発現解析と、生体内カルシウムイメージングによる神経回路再構築の定量解析を駆使することにより、修復性ミクログリア、神経細胞による脳機能回復の維持に必要な細胞情報をデコードする。
脳梗塞後の神経修復を開始させる分子・細胞メカニズムは未解明であり、脳血管障害における網羅的な脂質解析に基づく脂質代謝研究はほとんど行われていない。本研究によって、脳保護・修復的な脂質を同定し、その作用機序と生成メカニズムを解明することにより、治療剤の開発を目指した。脳梗塞亜急性期において梗塞周辺部の神経細胞から産生されるPLA2G2Eによって、脳梗塞後の膜残骸に含まれるphosphatidylserineを基質として15-HETrEのようなジホモγリノレン酸の代謝物が生成される。これらの脂質代謝物は、梗塞周辺部の神経細胞Padi4の発現を誘導し、ヒストンのシトルリン化を介してglobalな転写制御を行い、脳修復的な遺伝子発現をもたらす。15-HETrEやジホモγリノレン酸を用いた治療剤開発によって、脳梗塞患者の神経機能予後を改善できると考えられる。脳は永らく回復しない臓器であると考えられていたが、かなり劇的かつ自律的な修復機能を備えた臓器であることが証明できた(Neuron 2023、PCT出願済み)。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
脳はグリア細胞と神経細胞の相互作用によって、脳損傷の場合に修復メカニズムを発現させることができる。本研究によって神経細胞における脳機能回復に必要なメカニズムが解明できており、脳梗塞後の修復誘導にかかるグリアデコードを明らかにすることができる。
本研究課題によって明らかになりつつある、修復性神経細胞や修復性グリア細胞の誘導メカニズムと、これらの修復機能を維持する分子メカニズムの詳細を解明する。具体的には、修復機能を持つミクログリアを脳内から単離し次世代シークエンス解析によって一細胞レベルで遺伝子発現パターンを解析する。脳梗塞後の機能回復にかかる修復メカニズムの維持に必要な転写因子群を同定し、これらを制御することによって修復維持のためのグリアデコードを解明すると同時に、脳機能回復を持続促進させる治療薬開発を行う。
All 2024 2023
All Journal Article (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 1 results) Presentation (5 results) (of which Invited: 5 results)
Nature
Volume: 未定 Issue: 8013 Pages: 901-909
10.1038/s41586-024-07372-6
Neuron
Volume: 111 Issue: 19 Pages: 2995-3010.e9
10.1016/j.neuron.2023.06.024