Project Area | Multi-layered regulatory system of plant resilience under fluctuating environment |
Project/Area Number |
23H04195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (III)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山内 卓樹 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 准教授 (50726966)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥7,800,000 (Direct Cost: ¥6,000,000、Indirect Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
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Keywords | イネ / 根 / 発生 / 共生 / 非生物的ストレス / リン酸欠乏 / ストリゴラクトン |
Outline of Research at the Start |
植物の根の組織構造は、内側から中心柱、皮層および表皮の順に並ぶ。中心柱内の導管は地上部への養水分の輸送を担う一方、皮層の崩壊により形成される通気組織は根端部への酸素供給を担う。 これまでの研究から、イネはリン酸欠乏に応答して根の皮層を特異的に肥大させるとともに、通気組織形成による皮層の崩壊を抑制することで、共生の場である皮層の生細胞の面積を最大化する機構をもつことが示唆された。 そこで、本研究ではイネがリン酸欠乏に応答して皮層を肥大させるメカニズムとその適応的意義を植物-微生物共生の観点から理解する。その上で、根が土壌中の不均一環境に応答して発生と共生を協調的に制御するメカニズムの解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では, 植物が土壌中のリン酸の欠乏に応答して根の皮層を特異的に肥大させるメカニズムとその適応的意義を植物-微生物共生の観点から理解する.それを基盤として, 土壌中の不均一環境に応答したAM菌共生と根の形質可塑性を制御する分子メカニズムの解明を目指す. イネは, 地上部の分枝抑制に関わる非典型的ストリゴラクトン(SL)であるcarlactonoic acid(CLA)から派生する分子種やAM菌の菌糸分岐誘導活性を担う典型的SLである4-deoxyorobanchol(4DO)やorobanchol(ORO)を生合成する.これら全ては, 前駆体であるcarlactone(CL)からCytochrome P450のCYP711ファミリーに属する一連の酵素によって生合成される.リン酸欠乏に応答した地上部の分枝抑制やAM菌の菌糸分岐誘導が知られているが, 植物の根の応答については未解明の部分が多い.これまでに, 研究代表者はAM菌共生の場であるイネの根の皮層がリン酸欠乏に応答して特異的に肥大することを発見した. 本年度は, SLの生合成に関わる各変異体を材料としてリン酸欠乏に応答したイネの根の皮層の肥大がどのように変化するのかを評価した.その結果, 非典型的SLおよび典型的SLの両方の生合成を阻害した変異体では, 根の皮層の肥大が完全に抑制されることが明らかになった.一方, 典型的SLのみを阻害した場合は, 野生型のイネと同様に皮層の肥大がみられた.これらの結果から, 根の皮層の肥大は地上部の分枝抑制と同様に非典型的SLによって制御されることが示唆された.また, 野生型のイネを対象とした網羅的な遺伝子発現解析の結果から, リン酸欠乏の根においてはオーキシンやサイトカイニンの蓄積が変化することが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は, dwarf(d)変異体やAM菌共生を担う酵素遺伝子の変異体cyp711a2および cyp711a3を用いてリン酸欠乏におけるイネの根の皮層の肥大を評価した.その結果, SLの生合成変異体d17や受容変異体のd14では, イネの根の皮層の肥大が完全に抑制されることが明らかになった.一方, cyp711a2および cyp711a3では, 野生型のイネと同様に皮層の肥大がみられた.これらの結果から, AM菌共生の場の拡大につながる根の皮層の肥大は, 地上部の分枝抑制と同様に非典型的SLによって制御されることが示された. また, 野生型のイネを対象としたRNAseq解析の結果から, リン酸欠乏では根端部のオーキシンやサイトカイニンの蓄積が変化することが示された. 以上の結果から, リン酸欠乏では根における非典型的SLのcarlactonoic acid(CLA)またはその派生物の生合成が活性化され, 蓄積した非典型的SLがオーキシンやサイトカイニンの生合成や輸送を制御して根の皮層の肥大を制御するメカニズムが明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から, リン酸欠乏では非典型的SLのcarlactonoic acid(CLA)またはその派生物の生合成が活性化されることで, 根の皮層の肥大が制御されることが明らかになった.最近, イネにおいてCLからCLAの変換はCYP711A5およびCYP711A6が担うことが報告された.そこで, 今後はCYP711A5/A6の二重変異体において根の皮層のサイズがどの様に変化するかを評価する.また, 地上部の分げつ抑制と根の皮層サイズの制御を統合的に制御するためには, SLの輸送制御が重要であると考えられる.そこでペチュニアのSL輸送体PDR1のホモログとして, イネのPDR7, PDR8およびPDR9をコードする遺伝子の機能破壊系統の表現型の解析やPDRのプロモーターとORFをGFPと融合させ, PDRタンパク質の組織および細胞内局在を解析することで, イネにおけるSLの統合的な制御機構を明らかにすることを目指す.
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