Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
翻訳はmRNAの配列情報をもとにタンパク質を合成する過程であり、多面的なタンパク質世界の中核をなす現象です。本研究では、翻訳の制御過程を細胞内において高時空間解像度でイメージングできる新規技術(Kobayashi & Singer, 2022, Nature Commun.)を活用し、近年論争になっている「翻訳はpoly(A)鎖によって促進されるのか・されないのか?」といった問いに、mRNA一つ一つの翻訳状態を細胞内で実際に可視化することで答えます。これにより、翻訳の典型的・非典型的な制御機構に迫ります。
翻訳は、mRNAの配列情報をもとにタンパク質を合成する過程であり、多面的なタンパク質世界の中核をなす現象である。その重要性ゆえに、これまで長らく精力的に先行研究が行われてきたが、実はその大部分は生化学的な手法(細胞を破砕して得られるライセートを用いた手法など)によるものである。これはすなわち、多面的なタンパク質世界を長年にわたり「同一の視点」から眺めてきたような状況ともいえる。そこで本研究では、翻訳の制御過程を細胞内において高時空間解像度でイメージングできる申請者独自の新規技術(Kobayashi & Singer, 2022, Nature Commun.)を「新しい視点」として活かし、近年論争になっている「翻訳はpoly(A)鎖によって促進されるのか・されないのか?」といった問いに、mRNA一つ一つの翻訳状態を細胞内で実際に可視化することで答える。これにより、多面的なタンパク質世界を理解する一助として、翻訳の典型的・非典型的な制御機構について理解を深めることを目的としている。2023年度の研究実績の概要としては、本研究の要となるpoly(A)鎖が有り・無しのレポーターmRNAを細胞内において発現させる系を確立すると共に、本発現系とイメージング系の最適化を精力的に進めた。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
2023年度までの進捗状況としては、まず本研究の要となるpoly(A)鎖が有り・無しのレポーターmRNAを細胞内において発現させる系を確立し、双方の翻訳活性を実際に細胞内で可視化した。具体的には、レポーターmRNAを内在性のmRNAと同程度の細胞内濃度で発現させ、smFISHと呼ばれる手法によりmRNAを1分子感度で可視化した。同時に、SunTag(レポーターmRNAのORFにコードされている)と呼ばれるペプチドを免疫染色し、mRNA上の新生ペプチドも1分子感度で可視化することで、その翻訳活性も可視化した。以上の進捗状況を踏まえると、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
2023年度までの進捗状況を受けて、2024年度においては、MATLABを用いた画像解析フローにより、細胞内の全てのmRNAについて翻訳活性の定量化を進める。以上の定量解析を、poly(A)鎖が有り・無しのレポーターmRNA双方について行い、比較統計解析を行う。さらに、poly(A)鎖が有り・無しのレポーターmRNAだけでなく、poly(A)鎖の長さを段階的に変化させた新規レポーターmRNAシリーズについても構築し、比較統計解析に追加する。これにより、これまでの翻訳研究の中で最も信頼できるレベルで、翻訳とpoly(A)鎖の因果関係を(有無だけでなく、長さとの関係性についても)検証する。
All 2023 Other
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (4 results) (of which Invited: 3 results) Remarks (2 results)
Seibutsu Butsuri
Volume: 63 Issue: 3 Pages: 160-162
10.2142/biophys.63.160
https://researchmap.jp/hota-koba
https://sites.google.com/view/h-kobayashi-lab