Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では、細胞核内におけるゲノムDNAの物理的性質の理解のため、数百キロbpサイズのループドメインの構造と動態と結びついた粘弾的性質を特徴づけて、ループ形成に関連する分子の粘弾性状態への役割の物理的側面を明らかにする。特に、SMC複合体に関連したループ領域の高解像度Hi-Cデータを利用し、申請者が独自に開発してきたPHi-C解析手法によって、ループ構造に関係したクロマチンの粘弾性状態を明らかにし、そのような粘弾性に整合するループ形成メカニズムを理論的に解明する。
Hi-Cデータに基づいた高分子モデルを構築するにあたり、独自に開発したPHi-C法という解析ソフトウェアを用いることで、高分子モデル内の相互作用ポテンシャルを決定することができる。このモデル化では、すべての高分子セグメント要素に対する運動方程式が記述される。しかしながら、生細胞内での特定遺伝子座や単一ヌクレオソームの動態を観測する場合、観測されるのはクロマチン繊維内の蛍光ラベル化された一部分だけである。観測されない部分は、クロマチン繊維として存在しているものの、無視されてしまう。したがって、クロマチン繊維内の蛍光輝点の動きを物理的に記述するには、観測されない部分の寄与を除外した効果が導入されることになる。このような考えに基づいて、PHi-C法による高分子モデル内の1つのセグメント要素の運動方程式がどのように与えられるか厳密な導出を試みた。その結果、新しいタイプの一般化Langevein方程式が導出され、無視されるセグメント要素が実効的にノイズとなり、一方で、その抵抗応答としてのメモリー関数とバランスをとっていることが明らかになった。それゆえ、単一高分子自身における粘弾的性質の起源を明らかにすることができた。Hi-Cデータに基づいた高分子モデルの時空間スケールの決定することで、現実の時空間スケールに整合した高分子モデルを構築することができる。公募班の落合教授のグループと連携し、seq-DNA-FISH法による特定遺伝子座周辺の3次元ゲノム構造データと、特定遺伝子座の生細胞内での動態データを組み合わせることを試みた。その結果、転写状態に応じたNanogおよびSox2遺伝子座周辺のクロマチン物理モデルの構築に成功した。
1: Research has progressed more than it was originally planned.
当初の計画と比べ、より物理的に基礎的な部分が進展した。そのため、より定量的にクロマチンの粘弾性を明らかにすることができている。論文としての投稿準備が着実に進んでいる。計画以上に、Hi-Cデータに基づいた高分子モデルの時空間スケールの決定を進めることができた。Hi-Cデータに基づいてループ形成に関わるクロマチン粘弾性の解析においても、ループ形成領域に結合するコヒーシンとの対応で解析を進めており、予備的な結果が出始めてきている。
クロマチン動態のデータ解析のためには、クロマチン繊維の周囲環境の粘弾性も考慮する必要があり、その方向に理論とデータ解析手法を展開していく必要がある。残りの計画も予定通りの計画に沿って推進する。
All 2024 2023
All Journal Article (4 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Open Access: 4 results, Peer Reviewed: 3 results) Presentation (12 results) (of which Int'l Joint Research: 5 results, Invited: 8 results)
bioRxiv
Volume: - Pages: 568629-568629
10.1101/2023.11.27.568629
Science Advances
Volume: 9 Issue: 14 Pages: 1-19
10.1126/sciadv.adf1488
Molecular Cell
Volume: 83 Issue: 13 Pages: 2188-2205.e13
10.1016/j.molcel.2023.05.023
The EMBO Journal
Volume: 42 Issue: 18
10.15252/embj.2022112305