Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
「いま自分がどこにいるのか」という空間認識は、動物の生存に重要な脳機能である。多くの動物は視覚を頼りに自己位置の推定をおこなう一方で、推定により生成された空間情報は高次脳領域である海馬に存在する。しかし、視覚に含まれる情報 ―とりわけ質感の情報― が、海馬の空間情報表現にどのように反映されるかは分かっていない。そこで本研究は、空間探索行動中の動物に対して、複合現実環境を用いてさまざまな質感の視覚情報を与えつつ、海馬と嗅内野において大規模な神経活動計測を実施する。これにより、視覚野から海馬にいたる脳領域における視覚質感の処理過程を解明することが本研究の目的である。
「いま自分がどこにいるのか」という空間認識は、動物の生存に重要な脳機能である。多くの動物は視覚を頼りに自己位置の推定をおこなう一方で、推定により生成された空間情報は高次脳領域である海馬に存在する。しかし、視覚に含まれる情報 ―とりわけ質感の情報― が、海馬の空間情報表現 (場所細胞) にどのように反映されるかは分かっていない。そこで本研究は、空間探索行動中の動物に対して、複合現実環境を用いてさまざまな質感の視覚情報を与えつつ、海馬と嗅内野 (視覚野と海馬を中継する脳領域) において大規模な神経活動計測を実施する。これにより、視覚野から海馬にいたる脳領域における視覚質感の処理過程および符号化様式を解明する。とりわけ、①単一細胞における情報表現にくわえて、②細胞間情報伝達、および、③細胞集団による情報表現まで明らかにする。これにより、視覚質感が海馬空間表象へと変換される深奥質感処理の実態を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は、場所受容野の再配置を引き起こすための、複合現実環境の最適化を進めた。また、大規模神経活動計測は熟練した実験技術を必要とするが、これを容易かつ高速化するために、実験装置の各種の改良を進めた。加えて、海馬台の細胞集団の発火活動が低次元神経多様体を構成することを見出し、この成果について論文発表を行った(Nakai, Kitanishi, Mizuseki, Sci Adv, 2024)。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本研究において中心的な実験装置となる、複合現実環境のセットアップをおおよそ終えた。また、海馬台の細胞集団の活動を神経多様体として特徴づけた論文を発表した(Nakai, Kitanishi, Mizuseki, Sci Adv, 2024)。こうした進捗から、おおむね順調に進展していると判断した。
構築した複合現実環境を用いて、海馬・嗅内野における空間表象の計測と解析を進める。環境の変化により、空間表象がどのようなダイナミクスで遷移するかを解明することで、視覚情報が海馬・嗅内野の空間表象に統合される仕組みを明らかにする。
All 2024 2023
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)
Science Advances
Volume: 10 Issue: 5
10.1126/sciadv.adi4471