Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
生物の細胞ではNa+やK+の流出入による神経興奮や、Ca2+シグナリング、H+濃度勾配によるATP合成など、根源的なイベントが多様なイオンの動態によって制御されている。しかし同様のシステムは、いまだ人工細胞など非生物的な系では実現されていない。そこで本研究では、光依存的に様々なイオンを輸送する微生物ロドプシンを人工リポソーム中に導入することで、人工細胞内のイオン組成を光で制御する技術を開発する。これにより、光によって人工細胞内に活動電位やシグナリング制御、エネルギー生産などの高度な機構を組み込む技術的基盤がもたらされ、特に当該研究領域においてはケミカルAIによる演算の高速化をもたらす刺激入力を可能とする。
本研究課題の目標である、人工細胞への自在なCa2+およびH+シグナルの自在入力法の開発のため、本年度は新奇なイオンチャネルおよびイオンポンプ型ロドプシンについて、物性評価と高機能性分子の探索を行った。その結果、既存のものとはイオン輸送特性や応答波長などが大きく異なる分子を多数発見した。特に植物などから容易に入手可能な、ルテインやゼアキサンチンなどの3-OH型のカロテノイドを光アンテナとして結合するH+ポンプ型ロドプシンである、Kin4B8が細菌から見出され(Chazan et al. Nature 2023)、さらに同じ様に3-OH型カロテノイドを結合することができるロドプシンを多数同定している。今後これらの分子を用いることで、従来のレチナールのみを発色団とするロドプシンと比べ、高感度なイオン動態の光制御が可能になると期待される。特に3-OH型カロテノイドを結合するロドプシンは420 nm周辺の紫色光に対して高い応答性を示し、これは既知のカロテノイド結合型の分子とは大きく異なるものである。これにより、これらの分子は多色光源を用いた蛍光タンパク質やチャネルロドプシンの同時イメージング・同時操作のための有用なツールとなる可能性を有すると考えられる。またイオンチャネル型のロドプシンについても検討を行い、膜局在やチャネル開閉速度などが従来のものと異なる分子を得ることができている。さらに本年度はCa2+操作用ロドプシン開発のため、新たに蛍光顕微鏡を用いた、Fura-2色素によるCa2+イメージング系の構築を行った。これにより、今後より多くのロドプシンについてCa2+輸送能の評価が可能になると期待される。そしてすでに一部の巨大ウイルス由来のロドプシンについて評価を行い、小胞体などからのCa2+放出を光依存的に誘導することが可能であることを確認している。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
All 2024 2023 Other
All Int'l Joint Research (5 results) Journal Article (10 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Peer Reviewed: 10 results, Open Access: 6 results) Presentation (31 results) (of which Int'l Joint Research: 6 results, Invited: 11 results) Remarks (1 results)
The Journal of Physical Chemistry B
Volume: 128 Issue: 3 Pages: 744-754
10.1021/acs.jpcb.3c07510
Volume: 128 Issue: 10 Pages: 2389-2397
10.1021/acs.jpcb.3c08465
Scientific Reports
Volume: 13 Issue: 1 Pages: 7675-7675
10.1038/s41598-023-34687-7
The Journal of Physical Chemistry Letters
Volume: 14 Issue: 31 Pages: 7083-7091
10.1021/acs.jpclett.3c01133
Volume: 127 Issue: 32 Pages: 7123-7134
10.1021/acs.jpcb.3c02116
Cell
Volume: 186 Issue: 20 Pages: 4325-4344.e26
10.1016/j.cell.2023.08.009
Volume: 127 Issue: 43 Pages: 9215-9222
10.1021/acs.jpcb.3c05467
Nature Microbiology
Volume: 8 Issue: 11 Pages: 1942-1943
10.1038/s41564-023-01491-y
Journal of Molecular Biology
Volume: 436 Issue: 5 Pages: 168331-168331
10.1016/j.jmb.2023.168331
BMC Biology
Volume: 21 Issue: 1 Pages: 291-291
10.1186/s12915-023-01789-7
https://inoue.issp.u-tokyo.ac.jp/index.html