Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
生体内で機能するゲノムDNAは、細胞内での遺伝情報の保持という生命維持に欠かせない重要な役割を担っているが、本研究ではより原始的で単純な生体分子である短鎖DNAが集合することで、どこまで人工的な生命に近づける可能性を持っているかという視点から、DNAマイクロ集合体の未知の機能を探索する。周辺環境変化により離合集散するDNAマイクロ集合体には化学合成により自在に機能を追加することが可能であり、光操作によって選択的な集合体間の情報伝達を試みる。最終的には、周囲の環境変化によって可逆に形態を変化させ、外部刺激により制御可能でありながら生命体のように機能するDNAバイオマテリアルの創生を目的とする。
本研究計画「短鎖DNAの集合制御による高効率電子シグナル伝達システムの創出」では、自己集合するDNAに着目し、短鎖DNAが集合することで、どこまで人工的な生命に近づける可能性を持っているかという視点から、DNAマイクロ集合体の未知の機能を探索するものである。初年度は、ポリエチレングリコール高濃度条件で六角形プレート型となる液晶DNAのビルディングブロックの配列を変更することで、形成される液晶の形状への影響を観測し、デザインした配列の剛直性が集合体形成と関連していることが示唆された。さらにこれまで1種類であった集合体を形成するためのビルディングブロックとなる短鎖DNAを2種類にしたところ、新たに加えたDNAのわずかな末端配列や長さの変化が集合体の形状に大きく影響を及ぼすことがわかった。またその形状はそれぞれのDNAの濃度によって変化した。そこで蛍光色素をラベルしたオリゴヌクレオチドを準備し蛍光顕微鏡観測を行ったところ、集合体内の2種類のDNAの局在を明らかとすることができ、より高次の集合体の形成メカニズム解明への大きな手がかりを得た。さらに偏光顕微鏡による観測、顕微鏡観測下での温度変化実験、小角・広角X線散乱実験などにより、集合体内の二本鎖DNAが六方柱状に隣り合って液晶相を形成していることを確認した。これらの結果は、わずかにDNA配列を変更することで、枯渇力をドライビングフォースとして自己集合する生体のビルディングブロックが、集合体の成長方向を変化させ、マイクロメートルサイズにまでなる集合体を制御することができることを示した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
初年度は本研究グループで新たに複数の種類のビルディングブロックからなる六角形DNA液晶を発見し、その詳細な内部構造を小角および広角X線散乱測定により明らかにすることができた。さらにより高次の集合体の形成メカニズムについて検討を進めている。
液晶や液滴となったDNA集合体中の二本鎖DNAの末端同士のスタッキングを利用し、修飾核酸を用いてDNA集合体中での長距離電子移動の可能性を調査する。すでにDNA内のホール捕捉塩基の合成については前駆体を含むオリゴヌクレオチドから固相合成によって合成する手法が確立されており、今後はDNA集合体内で機能する光増感剤の合成を進める。さらに現時点では、光照射によってDNA液晶がその形態を変える現象を観測している。このような形態変化のメカニズムを詳細に調べることで、光により操作可能なマイクロメートルスケールの生体分子の集合体の制御と機能付加を進める。
All 2024 2023
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 2 results)
Accounts of Materials & Surface Research
Volume: 8 Pages: 107-115