Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
親の健康状態や生活基盤の不安定性は、子どもの健康状態や成育環境に大きな影響をもたらすと予想されるが、その関連については明らかではない。さらに、地域資源の有無により家庭環境の影響を緩和できるかどうかは不明である。本研究では、生態学的研究と個人レベルの観察的な検証を通して、不安定雇用が次世代に及ぼしうる短期・長期的な影響と、その影響を緩衝しうる地域資源に関するエビデンス構築を行う。
本研究は、政府統計データを用いた個人レベルの観察研究と地域の雇用環境や地域資源情報を用いた生態学的研究を通して以下の検証を目的とする。(1) 地域の雇用環境指標と、子どもの健康指標・成育環境との関連を検証する。(2) 雇用形態により、思春期の子どもの「悩み・不安」、「進路、結婚、子どもを持つ」など将来への期待感に差があるかを検証する。(3) 雇用形態により、未婚・子供無世帯を含めた全親世代の、心身・社会的なリスク集積の有無を検証する。(4) 地域資源、地域の特徴により、(1)~(3)の関連が異なるかを検証する。初年度である2023年度は、2つの政府統計データ(21世紀出生児縦断調査、国民生活基礎調査)の申請・取得に加え、雇用環境の指標(非正規雇用割合、完全失業率、最低賃金、生活保護割合、平均所得、無保険率、資格証明書を交付されている無保険子ども数等)、子どもの成育・健康指標(学力・体力・体格・不登校・進学率・自殺率)、地域資源の指標(児童館、放課後児童クラブ(待機児童数)、子ども食堂充足率、保健師数、ボランティア数等)、地域特性の指標(健診受診率・生活習慣病割合・婚姻状況・世帯構造・自殺率等)の収集を行った。各収集データの読み込み作業を進めており、今後、データクリーニング、分析用データベース構築を行い、研究仮説に沿った分析を行う予定である。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本研究で用いるデータ収集がほぼ完成している点で順調に進展している。政府統計データの項目数が膨大である点とデータ様式により解析準備に時間を要しているが、概ね当初の計画通りである。
引き続きデータ収集を進めると共に、政府統計データの読み込み作業、データクリーニング、分析用データベース構築を行い、研究仮説に沿った分析を実施していく予定である。