Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では以下3点の研究課題に取り組む。1)系統レビューによって、日本人集団における身体不活動の社会経済格差研究の動向と方法論的課題を明らかにすることで、今後の施策戦略や研究の必要性・方向性を導き出す。2)反復横断研究データを用いてCOVID-19感染症による部活動停止前後の身体不活動格差の推移を検討することで身体活動格差に対する部活動の貢献度を明らかにし、今後の社会システム実装への視座を得る。3)政府統計データを用いた生態学的研究により、子どもの体力に潜む社会経済格差の推移を明らかにし、社会経済対策の効果を検証する。
本研究は、思春期の健康行動における社会経済的格差に注目したものである。日本ではこれまで健康格差が緩やかであったが、近年その状況が悪化し、2013年以降政府が対策を進めている。欧米では家庭や近隣の経済状況による健康行動の格差が観察されているが、日本では健康格差の状況がよく分かっていなかった。パンデミックは所得格差を拡大させ、健康格差を悪化させる可能性が指摘されていた。したがって、本研究は、COVID-19流行前と流行中の青少年の健康行動における社会経済的格差の傾向を明らかにすることを目的とした。使用したデータは笹川スポーツ財団が実施した「2019年・2021年全国子ども・若者スポーツライフ調査」で、青少年と保護者による自記式質問紙調査法で収集された。調査対象は4歳から21歳の3,000人で、分析対象は12歳から18歳のうち、高校に通っていない18歳を除外したデータである。分析対象者数は2019年が766名、2021年が725名であった。社会経済状態の指標には等価所得を用い、好ましい健康行動は各種ガイドラインに準じて定義した。本研究の特徴は、格差勾配指標・相対指標を用いて、所得の各カテゴリーにおける人口割合の違いを考慮した格差指標を用いている点である。解析結果として、COVID-19流行前と流行中の青少年において、推奨される身体活動水準の達成における社会経済格差が拡大し、朝食摂取状況における格差は縮小していることが明らかになった。2019年には所得による身体活動の実施状況に差が認められなかったにもかかわらず、2021年は所得が低い家庭の青少年ほど身体活動の実施割合が低かった。朝食摂取状況はこの逆の様相が認められた。スクリーン時間については格差の縮小傾向が見られたが、統計的には有意ではなかった。睡眠時間と排便頻度は2019年および2021年ともに社会経済格差は認められなかった。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
当初予定の3課題のうち、1課題は既に完遂し、論文を公刊するに至ったため、順調に進展している。
今後以下の2課題に取り組む。1)系統レビューによって、日本人集団における身体不活動の社会経済格差研究の動向と方法論的課題を明らかにすることで、今後の施策戦略や研究の必要性・方向性を導き出す。2)政府統計データを用いた生態学的研究により、子どもの体力に潜む社会経済格差の推移を明らかにし、社会経済対策の効果を検証する。1)については、既に検索式を作成し、予備レビューを終えている。2)については、データは入手済み。解析手法を精緻化するために専門家に意見を求めている。
All 2024 2023 Other
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 2 results) Remarks (1 results)
Journal of Physical Activity and Health
Volume: advpub Issue: 6 Pages: 538-546
10.1123/jpah.2022-0489
https://hpsh-ryukyu.com/?page_id=263