Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
水が関係する熱力学量(水和熱力学量)を「高速に」(約1分程度)かつ「正確に」計算する手法を確立することが研究の目的である。対象はタンパク質とする。タンパク質の研究では、タンパク質と水を原子レベルで考慮する必要があるため、水和熱力学量を得るためには、タンパク質1構造あたり数時間から数十時間の計算が避けられない。そこで本研究では、タンパク質周りの水の分布(水和分布)を既存の手法の1/100の時間で計算できる独自の深層学習モデル「gr Predictor」を導入し、タンパク質の「水和熱力学量の高速計算を実現」する。
タンパク質の水和自由エネルギーを高速に計算する手法を開発することを目的として、研究を遂行した。開発には、タンパク質周りの水和分布を高速に計算する独自の深層学習モデル「gr Predictor」、並びに以前開発した水和自由エネルギー計算手法(ER-MA法)を用いた。2つの手法をハイブリッドした結果、これまでの水和自由エネルギー計算手法では数時間の計算が必要だったのに対し、新たに開発した手法では数分程度で水和自由エネルギーの計算が可能となった。また、開発した手法の水和自由エネルギー計算値は、既存の手法の計算値からわずか5%しかずれておらず、開発した手法は、速く正確に水和自由エネルギーを計算できることが分かった。さらに、水和エントロピーは形態計測学アプローチを用いて高速かつ正確に計算できることがすでに京都大学の木下名誉教授等によって示されており、水和自由エネルギーと水和エントロピーがあれば水和エネルギーは計算できるので、今回の成果によって、水和熱力学量を高速に計算する手法を開発することに成功した。また、タンパク質の水和自由エネルギー分布を計算する手法であるグリッド不均一溶液理論(GIST)と深層学習を融合する研究についても進めた。Deep GISTと名付けた深層学習モデルのハイパーパラメータサーチを行い、最適なハイパーパラメータを決定した。また、水和エントロピー分布と水和エネルギー分布についてもモデルを構築し、ハイパーパラメータサーチを行った。以上の結果を元に、論文執筆に取り掛かった。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
水和自由エネルギーを高速に計算する手法の開発に成功し、本研究課題完了の目処が立ったため。
開発した水和自由エネルギー計算法の精度向上を、gr Predictorをタンパク質-水分子間の相互作用エネルギーを出力する形に変更することによって試みる。また、デコイ判別(数百から数千の偽物構造のなかから天然構造を射当てる問題)など、膨大な量のタンパク質構造を扱う問題に手法を適用し、手法の有用性を議論する。以上の結果を論文としてまとめる。さらに、Deep GISTの論文の執筆を続ける。
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