Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
複数遺伝子を効率的かつ自在に調節しながら発現させる技術は,生物合成科学の発展において重要である。本課題では,ポリシストロニック遺伝子群を合理的に設計するための情報基盤を構築する。そのために連結配列と発現量の関係を詳細に解析し,その情報をデータベース化する。つづいて集積された連結配列で複数そして多様な遺伝子を連結し,各遺伝子の発現量が設計通りになるか,さらには真核生物でも連続翻訳が起こせるかを検証する。
複数遺伝子を効率的かつ自在に調節しながら発現させる技術は,生物合成科学の発展において重要と考えられる。これまでの研究で,上流遺伝子に下流遺伝子を直結するだけで下流遺伝子が発現すること,ならびに10塩基ほどの特定配列で連結すると下流遺伝子の発現量が顕著に向上することを見出した。この現象を利用すれば,ポリシストロニック遺伝群の発現量を翻訳段階のみで単純に制御することができるはずである。本研究では連結配列と発現量の関係を詳細に解析し,遺伝子クラスターを合理的に設計するための技術基盤の構築を目指す。モデル配列(lacZ-gfp)を用いた大腸菌発現系を用いて連結配列の検討を行った。シャイン・ダルガノ(SD)配列を含む11塩基の短鎖配列で遺伝子間を連結すると,下流のgfp遺伝子も効率よく発現することを発見した。その際のgfp発現量は,gfp遺伝子を単独で発現させた場合の約80%で,非常に効率が良いものであった。連結配列中のSD配列とgfpの開始コドンまでの塩基数には最適数があり,それより長くすると長さに応じてgfp発現効率が低下した。短くても効率は下がり,直結するとほとんど発現しなくなった。このように連結配列の工夫により,下流遺伝子を異なる効率で発現させられることが示された。さらに本年度では,異なる長さのランダム連結配列でlacZとgfpを連結したライブラリを構築した。合計500種以上の連結配列を解析し,各配列によってgfp発現量が大きく異なることを見出した。他遺伝子が連結された場合も調べ,いずれの場合も下流遺伝子が効率よく発現することを確認した。ただし,発現効率は連結する遺伝子によって変動があり,発現量は連結配列だけで決まるものではないことが明らかとなった。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
当初予定していた項目①短鎖連結配列のデータベース化を完了した。項目②実用性の検証については,異なる遺伝子を用いた解析まで完了した。項目③真核生物を用いた検証については,酵母を用いたモデル実験系の構築まで完了した。その解析は,令和6年度でゆとりをもって完了できる。連結配列だけで発現量を決定できないという予想外な点も見出された。この点については,機械学習を用いた配列予測技術が有望と考え,その専門家との共同研究の開始に至った。総じて,おおむね順調と評価した。
まず項目③真核生物を用いた検証を完了させる。モデル実験系のプラスミドは構築できているので,それを酵母に導入し,従来と同様な手法で生産されたタンパク質量を定量する。下流遺伝子からのタンパク質が検出されれば,真核生物でもポリシストロニック型の発現が可能であることが示される。また並行して,遺伝子が変わった場合でも発現量を予測できる機械学習データベースを構築する。本項目は産業技術総合研究所の梅村舞子 博士と共同して行う。学習には,令和5年度に得たライブラリの発現データを用いる。必要に応じ,さらなるデータも取得して学習に使用する。またmRNAの二次構造から発現効率の予測が可能かどうかも検討する。得られたデータのmRNA二次構造を予測し,発現パターンとの相関性を解析する。この解析についても,必要に応じて機械学習を利用する。
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