Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
創薬シーズとして中分子化合物が注目される中、特に大環状骨格を有する天然化合物は優れたリソースであると考えられている。一方、中分子天然化合物の生合成における大環状化機構を制御することによる新規化合物の創出に関しては技術的な問題から検討が不十分であり、体系化されていない。そこで本研究では、研究代表者らが独自に開発したI型ポリケタイド合成酵素(PKS) の改変技術を用いて大環状化機構を応用することにより、新奇環状中分子化合物を創製することを目指す。中分子化合物の生合成中間体を用いた酵素実験は極めて困難であるため、異種発現生産によって評価する本研究によってブレイクスルーがもたらされると期待している。
天然化合物は生物活性物質の宝庫であり、とりわけ環状中分子は医薬品シーズとして有利な性質を持つ。そのため革新的な誘導体化技術が望まれているが、多数の不斉点を含むなど極めて複雑な構造を有するため、化学合成は容易ではない。そこで生合成機構を利用した方法論の開発が重要であると考えられる。以上の背景より本研究ではI型ポリケタイド合成酵素(I型PKS)における大環状化機構を利用・改変し、新規環状中分子を得ることを目的とした。中分子天然化合物の生合成を改変するためには、100 kb超の巨大な生合成遺伝子クラスターを直接操作する技術が必要であるが、我々はI型PKS遺伝子を精確に改変することが可能な独自技術、in vitroモジュール編集技術を開発することに成功している。本技術により、I型PKS遺伝子を含む生合成遺伝子クラスター全長をクローニングした細菌人工染色体を鋳型として異なるI型PKSシステムの環状化機能を移植した。改変した遺伝子を宿主放線菌に導入し、異種発現させることで目的物質の生産を検証した。その結果、(元の生産菌では)直鎖状ポリケタイドを生合成するI型PKSに、環状ポリケタイドを生合成するI型PKSの環状化ドメインを移植したところ、新規化合物を生産することに成功した。本化合物を単離・構造決定したところ、新奇な54員環ラクトンであることを明らかにした。さらに移植範囲を比較検討することで、環状化ドメインが効率的に機能する移植範囲を見出すことに成功した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
一化合物ではあるが、直鎖状天然化合物を環状化した正に新奇な環状中分子化合物の取得に成功したという点で、本研究の大きな目的は一つ果たされたと考えている。本手法の適用範囲拡大や、新たな環状化機構の導入など、知見やノウハウを蓄積して体系化していくことが望まれる。
同様の戦略を他のI型PKSシステムに適用することで更なる新規環状中分子の取得を目指すとともに、非リボソームペプチド合成酵素様の環状化機構の移植にも取り組み、環状中分子デザインのレパートリー拡張を推進する。
All 2024 2023
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 1 results)
The Journal of Antibiotics
Volume: 77 Issue: 5 Pages: 288-298
10.1038/s41429-024-00711-9