Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究は、分子性結晶の構造転移において光渦ビームを照射することにより、所望のキラリティをもつ結晶構造へと転移させることを目指す。具体的には、熱などで安定相へ転移する準安定なラセミ化合物結晶に対し光渦ビームを照射し、キラリティ選択的に安定なコングロメレート相の核化を誘導する。結晶相の構造転移における光渦のキラリティ転写を、さまざまな分子を用いて検証することにより、光と物質間の角運動量の交換に適した分子設計における指針抽出のプラットフォームを提供する。
準安定なラセミ化合物に光渦を照射し、構造転移の誘導と同時に光渦のキラリティに応じたエナンチオマーから成るコングロメレートへの変換できる系を見出すことを全体の目的とし初年度は準安定ラセミ化合物結晶を与える化合物およびその構造転移挙動のスクリーニングを実施した。まずCSDに報告されている化合物の中から、ラセミ化合物とコングロメレートのどちらもが報告されている化合物の結晶を抽出したところ、約650個の化合物が見つかった。そのうち合成が容易な化合物を選択し、熱分析や粉末X線回折測定により構造転移挙動を調べ、ラセミ化合物が準安定相となる系を探索した。その結果、面性キラリティを示すフェノチアジン誘導体がキラリティの反転を伴いつつ、ラセミ化合物相からコングロメレート相へ不可逆に構造転移を起こすことを見出した。構造転移の挙動を温度可変偏光顕微鏡観察により調べたところ、結晶中の一点から構造転移が開始し、それが全体に伝搬することで構造転移が進行することが明らかとなった。構造転移の開始点は結晶ごとにランダムであったが、結晶中のクラックなど界面から進行するケースが多く観察された。結晶の外形から正確な方向は決定できていないものの、構造転移の伝搬は結晶の100面内の方向への進行が早く、垂直方向への伝搬はゆるやかに進行する挙動が確認された。構造転移後のキラリティは単結晶X線構造解析により行ったが、単純な加熱による構造転移ではキラリティの偏りは観測されていない。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
当初の予定通り、初年度にコングロメレートに構造転移するラセミ化合物結晶を発見することができた。特に、構造転移挙動について詳細に調べたところ、外部刺激によって構造転移が誘発されることも見出しており、光渦や円偏光のような角運動量をもつ光との相互作用を調べるにふさわしい系を発見した。
次年度は、領域内の共同研究を通じてフェノチアジン誘導体の構造転移について光との相互作用を調べるとともに構造転移後のキラリティの制御を試みる。また、発光性を示す化合物であることから円偏光発光特性の評価や、構造転移後の単結晶性を評価するため顕微CD法などの分析を試みる。
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Org. Process Res. Dev.
Volume: - Issue: 9 Pages: 3570-3577
10.1021/acs.oprd.4c00091
ChemRxiv
Volume: -
10.26434/chemrxiv-2024-rmkk7
熱測定
Volume: 51 Pages: 78-84
https://www.chem.es.osaka-u.ac.jp/mac/