Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
タスクスイッチング課題をマウスに行わせ、ルール切り替え後の行動変容特性を行動ビデオ画像より定量的に解析する。また、活動脳部位の全脳マッピングを行い、ルール切り替え行動に関連する脳領域を同定する。さらに領野毎の活性化神経細胞にカルシウムプローブや化学遺伝学ツールを発現させることにより、タスクスイッチ後の行動変容に伴う細胞特性を解析する。得られた結果に基づき、正しい解法の”気づき“を促進する神経機構を明らかにする。
認知的柔軟性あるいは行動柔軟性とは問題や環境が変化した際に古い行動規範(ルール)から新しい行動ルールへの速やかな切り替えを行う能力のことである。逆転学習課題はマウスにおける行動柔軟性を評価する方法の一つであり、マウスは複数の行動選択肢の中からトライ&エラーを繰り返しながら、正しい報酬ルールに従った行動に変容していく。しかしながら、この行動変容が脳内でどのように制御されているのかは不明である。本研究においては、野生型および遺伝子改変マウスが陥る多様なエラーパターンを手掛かりに、報酬ルール切り替え後に生じるエラー行動から正解行動に至る行動変容に焦点を当て、正しい解法の"気づき"の神経機構の解明をめざすことを目的としている。本年度においては新しい行動柔軟性評価課題であるシリアル逆転図形弁別課題を基としたタスクスイッチング課題を開発し、さらに図形選択方式を改良することにより学習効果が著しく上昇することを発見した。この改善により行動柔軟性を評価するまでの期間は従来の半分で済むようになった(特許出願済み)。さらに完成した課題を用いて、長期記憶障害が報告されているArc欠損マウスの認知柔軟性を評価してみた。当初の予想と反して、野生型マウスと比べて課題逆転後の成績が高いという結果が得られた。この原因を探るため、課題遂行中のマウスの行動を調べたところ、課題解法戦略がArc欠損マウスと野生型マウスでは異なる可能性が示唆された。このため行動画像解析および数理解析の専門家との共同研究を開始した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本研究では1. タスクスイッチングに伴う多様な行動変容の行動抽出と分類 2. 新規活動レポーターマウスを用いた行動柔軟性関連脳部位の同定 3. 行動柔軟性に関連する神経細胞特性解析と分子的プロファイリング 4. 切り替え後の最適解に行動を収束させる神経機構の解明、の4つ目標を定め研究を進めている。本年度は1、2について実施し、特許申請などの成果を得ている。新規のタスクスイッチング課題については論文投稿に向けたデータ収集および解析を優先的に進めている。また、行動抽出に関しては全課題セッションをビデオ録画し、DeepLabCut等を用いて体部位推定するためのプラットフォームを構築した。2のレポーターマウスに関しては本実験に適したラインの選定を行い、1系統(予備1系統)に絞り込んだ。このマウスを用いて課題を行うとともに、各種の遺伝子欠損や重複などの遺伝背景をもつレポーターマウス系統の作成を進めている。
次年度以降は1. タスクスイッチングに伴う多様な行動変容の行動抽出と分類 2. 新規活動レポーターマウスを用いた行動柔軟性関連脳部位の同定、についてさらに進めるとともに、3. 行動柔軟性に関連する神経細胞特性解析と分子的プロファイリング、および4. 切り替え後の最適解に行動を収束させる神経機構の解明、を実施することにより、報酬ルール切り替え後に生じるエラー行動から正解行動に至る行動変容である、"気づき"の神経機構の解明をめざす。
All 2024 2023
All Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 1 results) Patent(Industrial Property Rights) (1 results)