Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
海産生物ホヤは脊索動物門に属し、雌雄同体の体制をとる。孵化したホヤのオタマジャクシ幼生は遊泳するが、固着すると変態を始め、自ら移動することはない。そのため生育環境に合わせた合理的な生殖戦略を行う。雌雄同体と雌雄異体、放卵・放精のタイミングの差異、自家不和合性機構の有無など、ホヤの受精様式は多様である。これらの多様性は、植物における両性花と単性花、雌雄異熟、そして自殖と他殖に相当し、その共通性が見られる。そのため、植物から得られている知見を照らし合わせ、ホヤの配偶子がどのように自他を認識し選別するのか、動物であるホヤはどのようにして植物と同様の体制や機構を獲得し進化してきたのか、を解明する。
雌雄同体であるカタユウレイボヤは、自家受精を防ぐための自家不和合性を有している。精子と卵子は自他認識を行うことで自己の精子を拒絶するが、この自他認識は精子に発現する遺伝子s-Themis-A/B/B2と卵黄膜に発現するv-Themis-A/B/B2によって制御されている。これらの遺伝子は多型に富んでおり、その多型領域によって自他認識が可能となる。自己と認識した精子は、細胞外からのCa2+流入によって自己認識シグナルを誘導し、運動性及び受精能を失う。明確な自家不和合性を持つカタユウレイボヤとは対照的に、自家不和合性に揺らぎがある種や自家不和合性を獲得していない種も多く、ホヤの受精様式は多様である。本研究では、分子多型による鍵と鍵穴の仕組みと自己認識シグナルの伝達機構を生化学・分子生物学的に検証し、配偶子間認識機構を発達させたホヤの受精機構の全貌解明を目標としている。さらに、複数種のホヤを用いてその自家不和合性機構を分子構造と分子進化的側面から解析し、動植物に共通する新たな知見を得ることを目的としている。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
長年の課題であった自家不和合性分子s-Themisの検出を、免疫沈降とLC/MS/MS解析によって達成した。また、複数産地から採集したカタユウレイボヤのゲノムから新規アレルを同定し、どのように多型が産み出されたのかを探る新たなテーマとして発展した。
自家不和合性分子Themisの多型解析を引き続き行う。また、ホヤの自家不和合性機構を種を超えて網羅するために、各種ホヤの受精機構について、詳細な解析を行う予定である。
All 2023
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 2 results) Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)
genesis
Volume: 61 Issue: 6
10.1002/dvg.23556
International Journal of Molecular Sciences
Volume: 24 Issue: 13 Pages: 10662-10662
10.3390/ijms241310662
Journal of Veterinary Medical Science
Volume: 85 Issue: 9 Pages: 912-920
10.1292/jvms.22-0555