Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
HLAは自己認識に重要な分子であり、T細胞にシグナルを入力するものと広く理解されている。しかし、その教科書的理解のみで免疫バランスの恒常性を捉えることには無理がある。我々はこれまでにHLA依存的な薬物毒性研究を行い、HLAの多型間で細胞内での成熟過程や表面への輸送機構が異なり、毒性リスクと関連する可能性を見出している。本研究では、HLAがもつ分子特性を中心に、自己の免疫バランス理解に努める。
HLAクラスⅠ分子は、β2ミクログロブリンとヘテロ二量体を形成して発現し、T細胞に抗原ペプチドを提示して免疫を制御するとされている。しかし、その古典的なHLA発現のみではないことをこれまでに見出している。特に、HLAへの修飾の一つである糖鎖に着目し、Endoglycosidase H(Endo H)で切断され得る未成熟な糖鎖発現の割合が、HLAとβ2ミクログロブリンとの結合割合の低さと相関する可能性を考えている。そこで、実際に、β2ミクログロブリンをノックアウトさせたところ、完全にEndo H感受性のHLAのみとして発現することが分かった。また、それは細胞表面上にも発現し得ることを見出し、通常の、小胞体-ゴルジ体を介した輸送とは違う経路で運ばれている可能性についても、輸送阻害剤を用いた検討から示唆している。さらに、糖鎖プロテオーム解析を行ったところ、それら未成熟な糖鎖は高マンノース型であることも確認できている。同解析から、さらにユニークな糖鎖発現についても見出しているが、その点は今後の研究により詳細を詰めていく予定である。このような非典型的なHLA発現が免疫的・毒性的にどのような影響を及ぼすかは重要な課題である。そこで、免疫毒性に関係するHLA-B*57:01と薬物アバカビルの組み合わせに焦点を当てて研究を進めている。興味深いことに、古典的な小胞輸送の阻害剤を用いて細胞表面上のHLA-B*57:01発現をなくし、ほぼEndo H感受性のHLA発現のみにした際にもHLAとアバカビルは結合していることを見出し、このような非典型的なHLAが免疫的なリガンドとして機能している可能性を考えている。今後、それを認識し得るセンサーやリガンドとしての構造的特徴など、様々検討していく必要がある。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
HLA分子のユニークな翻訳後修飾や輸送について分子機序を明確に見出せつつあり、研究は順調に進んでいると判断できる。
これまでに見出した知見をもとに、未成熟糖鎖型HLAの免疫的意義などの解明に努める。それが可能となるようなモデルマウスの作出および解析を進め、動物レベルでの意義解明も行いたい。また、このような非典型的HLAのリガンドとしての特徴を明らかにすべく、ペプチドーム解析や構造解析などを実施し、通常のフォームとの違いを探しつつ、免疫センサーの同定に向けても研究を展開したい。
All 2024 2023
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (7 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 3 results)
PNAS Nexus
Volume: 3 Issue: 4 Pages: 140-140
10.1093/pnasnexus/pgae140
Toxicological Research
Volume: 40 Issue: 2 Pages: 223-235
10.1007/s43188-023-00220-1