Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
肥満というと糖尿病や動脈硬化が注目されるが、自己免疫疾患・アレルギーといった免疫システムの暴走が招く疾患とも関連が深い。しかし、糖尿病や動脈硬化症と比べると依然として肥満によるTh17バイアスを介した自己免疫疾患の病態メカニズムについては大幅に理解が遅れている。本研究ではこれまでの研究成果を元に、脂質代謝という新たな観点から自己認識と免疫応答について見つめ直し、RORgtを内因性脂質センサー、T細胞受容体 (TCR)を外因性センサーと位置付け、T細胞内外の両面からTh17バイアスに取り組むことで、T細胞が認識する肥満特有の自己指向性免疫の本態について理解を試みる。
今年度は、肥満環境におけるTh17バイアスの要因となる内因性脂質(1-18:1-LPE)とTh17細胞のマスター転写因子であるRORgtとの会合について、Thermal Shift Assayやリピドミクス解析を組み合わせた手法により検証を行った。その結果、1-18:1-LPEは非常に高感度にRORgtと会合することが明らかとなった。実際に、脂肪酸側鎖がオレイン酸から別の脂肪酸への変更、及びLPEの脂質骨格をLPCやLPGなど別の骨格に変更させるだけでその会合はほとんど認められなくなった。また、この結果と一致するように、1-18:1-LPE以外の脂質種ではTh17誘導能も全く認められないことを見出している。こうした一連の成果より1-18:1-LPEがTh17バイアスを作り出す責任脂質と位置付けている。これらの成果を論文としてまとめ、Science Immunology誌に発表を行った。また、脂質センサーRORgtと特異的脂質との会合の生理的重要性についてはRORgtの点変異クローンや点変異マウスを作製した。特にRORgtのリガンド結合ドメインの304番目のアラニンをフェニルアラニンやイソロイシンに置換することでRORgtのリガンド結合能だけでなくTh17誘導能など一連のRORgt機能がほとんど認められなくなることをマウス個体レベルで明らかにしている。現在これらの内容をまとめ論文投稿準備中である。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
RORgtと内因性脂質の会合やRORgtの点変異マウスの解析は完了し、その生理的重要性については立証した。また、肥満マウスを用いてのバルクTCR解析やscRNA-seq/scTCR-seqについても順調に進んでいる。
次年度は以下について中心に進める。肥満マウスモデルを用いて、複数の時点において脾臓からT細胞を分離し、単一細胞マルチオミクス解析(トランスクリプトーム、表面マーカー、TCRレパトア解析)を実施する。得られたデータのマッピング・トランスクリプトーム解析・表面マーカー解析・TCRレパトア解析はCell Rangerを用いて実施し、Seuratアルゴリズムにより統合する。その統合データを用いてWeighted Nearest Neighbor(WNN)法によるクラスタリングを行い、各細胞分画を同定すると同時に、各分画に特徴的なmRNAおよび表面マーカーを抽出する。また、各T細胞分画におけるクローン拡大の程度を評価するだけでなく、クローン性および非クローン性の細胞集団の違いを明らかにする。特に、複数時点でクローン拡大している持続性Th17細胞分画の特性を解明する。さらに、Monocleを用いた疑似時間軸解析やVelocytoを用いたRNA velocity解析などを行うことで、細胞分化過程を追跡する。さらに、同一の組織検体を用いてプロテオーム解析を行い、Th17細胞分画と同様の挙動を示すタンパク・ペプチド配列のランキングを作成する。
All 2024 2023
All Journal Article (8 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 8 results, Open Access: 7 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 3 results)
Molecular & cellular proteomics
Volume: 23 Issue: 4 Pages: 100745-100745
10.1016/j.mcpro.2024.100745
Proceedings of the National Academy of Sciences
Volume: 121 Issue: 9
10.1073/pnas.2313964121
International Immunology
Volume: 36 Issue: 3 Pages: 129-139
10.1093/intimm/dxad049
Aging
Volume: 15 Issue: 19 Pages: 9948-9964
10.18632/aging.205078
Science Immunology
Volume: 8 Issue: 86
10.1126/sciimmunol.add4346
Journal of Proteome Data and Methods
Volume: 5 Issue: 0 Pages: 10
10.14889/jpdm.2023.0010
J. Diabetes invest.
Volume: 14 Issue: 9 Pages: 1136-1139
10.1111/jdi.14037
Pharmacology & Therapeutics
Volume: 245 Pages: 108411-108411
10.1016/j.pharmthera.2023.108411