Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では、表皮ケラチノサイトに特有のバリア脂質代謝経路のうち、免疫細胞が皮膚バリア異常を認識する際に鍵となる脂質分子と受容体を同定し、免疫応答に至る分子機序を解明することで、バリア機能の低下を伴う炎症性皮膚疾患の背景となる病態の理解を目指す。加えてこの自己認識機構を阻害した際に生じる影響を解析することで、バリア脂質代謝異常に対する免疫センサーが担う有益・有害な生体応答を明らかにし、その生理的意義を理解する。
表皮ケラチノサイトに特異的に存在し、バリア機能に不可欠なアシルセラミド代謝経路が障害される先天性魚鱗癬モデルマウス4系統を用いた解析から、主に以下のような研究の進展があった。各マウス系統の皮膚における遺伝子発現をマイクロアレイ解析により網羅的に比較すると、ケラチノサイトの活性化ならびに炎症性免疫応答を起こす系統(Pnpla1欠損マウス、Abca12a欠損マウス)と、ほとんど起こさない系統(Sdr9c7欠損マウス、Cyp4f39欠損マウス)に明確に分類された。前者では、炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-6、IL-23a、IL-33、TNFαなど)やケモカイン(CXCL1、CXCL5、CXCL10など)、ケラチノサイト活性化マーカー(Krt6a、Krt6b、Krt16、S100a8、S100a9など)が共通に上昇していた。一方、ケラチノサイト分化マーカーに関しては、フィラグリン類似のFlg2が減少するのに対し、角化細胞の周辺帯 (cornified cell envelope) の構成要素(Lce3b、Lce3c、Sprr1a、Sprr1b、Sprr2b、Sprr2e、Sprr2gなど)が増加するという特徴が見られた。そこで、GM-CSF存在化で分化誘導した骨髄由来樹状細胞(BMDC)に対して、表皮から抽出した脂質をプレートに固相化して作用させると、先天性魚鱗癬モデルであるPnpla1欠損マウス由来の脂質によって、炎症性サイトカインの産生が強く誘導された。したがって、この欠損マウスの表皮には炎症誘導性の脂質成分が含まれていることが示された。さらにこのマウスでは幼弱なランゲルハンス細胞が顕著に増加することを見出した。
3: Progress in research has been slightly delayed.
アシルセラミド代謝経路の異常によって生じる表皮脂質により、骨髄由来細胞の活性化やサイトカイン産生が惹起されることが示され、研究課題の中心となる仮説が概ね正しいことが示唆されたものの、責任脂質およびその受容体の同定に時間がかかっているため。
Pnpla1欠損マウスの表皮における脂質代謝異常を免疫細胞が認識する分子機序を明らかにするために、引き続き責任脂質分子と受容体のスクリーニングを進め、炎症応答に関与するシグナル伝達経路を検討していく予定である。また、魚鱗癬モデルマウスの表皮を用いて、シングルセルRNA-seq解析等を行うことで、どのような細胞集団が炎症等々に関わっているのかを明らかにする。
All 2024 2023 Other
All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (9 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results) Remarks (1 results)
Frontiers in Immunology
Volume: 15 Pages: 1401294-1401294
10.3389/fimmu.2024.1401294
Biomedicines
Volume: 12 Issue: 1 Pages: 69-69
10.3390/biomedicines12010069
https://www.igakuken.or.jp/biomembrane/