Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
浮遊性有孔虫は,炭酸カルシウムの重厚な硬骨格を形成する特徴を持ちながら,海洋で浮遊生活を送るプランクトンである.棘のような形態的特徴に加え,アメーバ様の仮足を伸長させたり網目状に展開させることができるため,殻の外側に仮足を出すことによって海水との抵抗を高め,浮遊生活に適応していると想定されるが,実験的にも理論的にもこれを検証した例はない.本研究では,海洋の有殻原生生物の「浮遊戦略」について,細胞行動による「沈まない工夫」と,細胞内構成物による「浮かぶ工夫」の両者に着眼し,ジオラマ環境下での鉛直移動メカニズムを解明する.
本課題では,「浮遊性有孔虫をプランクトンたらしめているものは何か?」を明らかにすべく,有孔虫の浮遊生態を観察するためのジオラマ環境構築を行い,その環境下での浮遊性有孔虫における,1 鉛直移動速度の見積もり,2 細胞内構造の観察による「正浮力要因」の検証,および3 「沈みにくさ」の定量化に取り組んでいる.令和6年度は,相模湾においてサンプリングを行い実験に供した.水温コントロールした水槽に実験用のシリンダーをセットし,横倒しにした実体顕微鏡にビデオカメラを取り付けた環境を構築した.3種(Trilobatus sacculifer, Globigerinella siphonifera, Globigerina bulloides)を対象に,エサを食べ,棘を回復させた個体を実験用とし,シリンダー中を降下する様子の観察と鉛直移動速度の測定を行った.また,生殖直前の棘を自折した後の個体も沈降実験に供し,同様に測定を行った.棘を有する個体の沈降速度は全種の中央値として1.1mm/s,棘自折後の個体では9.2mm/sとなり,棘を有することで8倍程度減速されることが定量的に明らかとなった.有孔虫個体を球と仮定したときの理論的な沈降速度と実測値との比較においては,棘なし個体においても差が見られ,理論モデルの修正が必要であることがわかった.細胞質の密度には油滴の量が大きく寄与すると想定しており,蛍光染色による油滴の可視化にも挑戦したが,共生藻を持つ種ではクロロフィルの自家蛍光が強すぎるという課題が浮き彫りになり,別の方法を検討する必要性があるとわかった.また棘の抵抗力の効果をモデルに組み込むことにも取り組んでおり,プロトタイプは構築できている状況にある.
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
初年度は計画通り沈降速度のデータを取得することができた.また,先行研究であるTakahashi and Be (1984)の結果と比較しても,同等条件の個体については同等の結果が得られており,実験環境や手法の妥当性についても確認できた.また領域全体会議などでのディスカッションから流体力学モデルに関する考察も深まり,不完全ではあるがプロトタイプのモデル化にも成功しているので,おおむね順調に進んでいると評価した.
令和6年度では取得できたデータ数が限られているため,追加の実験を行う予定である.また,棘ありの個体については棘を完全に広げた状態で速度測定することが難しいこともあり,個体のハンドリングに関して課題が残っている.そのため,より天然環境に近い個体の状態を維持したまま実験できるような装置の改良も加える予定である.個体のバルク密度の見積もりは,現状では殻サイズから計算する方法を用いているが,密度勾配をつけたシリンダーを用いて実験的に推測する方法も検討している.モデル化については,現時点で構築できているモデルをベースに,複数の修正を試しながら,実測と照らし合わせて改良していく予定である.
All 2025 Other
All Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 1 results) Remarks (1 results)
https://diorama-ethology.jp/public/r6/pub_002.html