Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
近年、学習が進むにつれて記号と対象の脳内距離が離れていくという記号分離仮説が提唱された。応募者は最近、数字と数量は学習初期の5歳児では類似した脳内表象を持つが、学習が進展した8歳児ではより独立した表象を持つことを報告した。本研究計画は人工ニューラルネットにより記号分離仮説を計算モデル上で再現できるかどうかを検討する。ニューラルネットから抽出した特徴量を利用して脳活動データを予測する符号化モデルを構築し、ニューラルネットとヒト脳内における記号システムとクオリア構造の学習過程における類似性を明らかにする。さらに、数量や数字に限らない記号一般に対して記号分離仮説が適用可能かどうかを検討する。
本研究の目的は、脳機能イメージングデータと人工ニューラルネットの双方から、発達・学習に伴う記号分離仮説(学習が進むにつれて記号と対象の脳内距離が離れていくという仮説)を検証することである。本年度、数量に関する人口ニューラルネットを構築することに成功した。先行研究(Nasr et al., Sci Adv 2019)に基づき、古典的な畳み込みニューラルネットワークであるAlexNetを実装し、ドットパターン画像を入力した際の最終層の活動を抽出した。その結果、1個、2個、…、20個という特定の個数のドットパターンに選択的に応答する人工ニューロンを発見した。これらの人工ニューロンを応答特性に関する主成分分析によって2次元空間上に投射すると、個数の順に対応するように人工ニューロンが並ぶ構造が明らかになった。これらの構造はドットパターンの占有面積や形状などの情報とは独立であった。さらに今年度は、数学能力の発達に関する機械学習応用研究の調査を行った。脳データから計算障害の分類や数学能力を予測する縦断および横断研究があるが、未就学児を対象としたデータが少ないという問題点を指摘し、Imaging Neuroscience誌に発表した。続いて、子供と両親の脳データの類似性に基づく先行研究を調査した総説論文を執筆し、Brain Structure and Function誌に発表した。また、発達データに対して符号化モデルを拡張する研究の意義を解説した総説論文をDevelopmental Cognitive Neuroscience誌に発表し、同様に符号化・復号化モデルの枠組みを一般向けに解説する記事をNote上に発表した。これらの研究は、発達脳データに対して機械学習や符号化モデルを適用する研究領域の現在の状況を明らかにするという点で、今後の研究推進の土台になるものである。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本研究の当初の予定は、先行研究で報告されてきた数量認知に関する人工ニューラルネットワークモデル (Nasr et al., Sci Adv 2019) を実装し、先行研究の結果が再現できるかどうか検討すること、およびその人工ニューラルネットを言語と画像のマルチモーダルモデルであるCLIPに基づき (Radford et al.,ICML 2021)、数字(テキスト情報)と数量(ドットパターンの画像情報)の埋め込みベクトル間の対照学習を行うことであった。当初の予定通り、畳み込みニューラルネットワークであるAlexNetを実装し、ドットパターン画像を入力した際の最終層の活動から、1個、2個、…、20個という特定の個数のドットパターンに選択的に応答する人工ニューロンを発見し、先行研究の結果を再現することに成功した。さらに、この学術変革領域に参加している他の研究者との交流を通じて、人工ニューロン同士の類似度に基づく解析をすることを思いつき、結果として先行研究を拡張するような結果(2次元空間上に投射すると、個数の順に対応するように人工ニューロンが並ぶ構造)を得られた。他方、CLIPに基づく数字と数量の人工ニューラルネットの対照学習まで研究を進展させることはできず、次年度以降の課題となった。また、数量認知の発達研究に関する現在の国際的研究動向を把握するために実施した調査により、今後の応用研究の道筋を明らかにすることができた。調査の結果はImaging Neuroscience誌、Developmental Cognitive Neuroscience誌、Brain Structure and Function誌上で論文として出版された。これらの雑誌はヒトの脳機能イメージング研究において広く知られた国際誌である。以上により、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
今後は、今年度に実装した数量の人工ニューラルネットワークモデルに基づき、数量に関するウェーバー・フェヒナー則など、数認知において広く知られた現象が再現されるかどうか、より詳細に確認する予定である。言語と画像のマルチモーダルモデルであるCLIPに基づき (Radford et al., ICML 2021)、数量認知のモデルを数字認知のモデルと接続する。数量と接続した数字の人工ニューラルネットに関しても、数量と同様の結果が得られるかどうかを確認する。その上でテキスト情報モデルに関して、数式入力に対してデコーダを通して解を出力するように学習を行う。学習はMathematics Dataset (Saxton et al., 2019) を利用する。学習過程において、モデル内部の表現(隠れ層の出力)がどのように変化するかを調査する。子供を対象としたMRIデータとして、先行研究においてリヨン神経科学研究センターで取得しているものを利用し(Nakai et al., PLOS Biol 2023)、人工ニューラルネットワークモデルにより抽出した数量・数字特徴量を用いて、特徴量と脳活動の関係を説明する符号化モデルを構築する。学習データに対する過適合を防ぐためにL2正則化つき線形回帰を用いる。構築した符号化モデルにより、学習に用いていない新規のデータについての予測精度を計算する。複数のニューラルネットワークモデルによって抽出した特徴量による予測精度を比較検討することにより、課題中の脳活動を説明するために最も効果的なモデルを選択する。本年度は、前年度の領域会議を通じて交流した他の領域メンバーと共同研究を推進する。特に、先行研究で色のクオリア構造に関して報告されてきたものと同様の性質が数量のクオリア構造に関しても成り立つかどうかを検討する。
All 2024 Other
All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 2 results)
Developmental Cognitive Neuroscience
Volume: 70 Pages: 101470-101470
10.1016/j.dcn.2024.101470
Imaging Neuroscience
Volume: 2 Pages: 1-24
10.1162/imag_a_00219
Brain Structure and Function
Volume: 229 Issue: 6 Pages: 1327-1348
10.1007/s00429-024-02804-5