Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
コオロギの前肢の脛節内部にある聴覚器(鼓膜器官)は世界最小クラス(200マイクロメートル四方)であるが、ヒトよりも広い可聴周波数域を有している。本研究では鼓膜器官のサブセルラー構造や物性を精査することにより、システムとしての基本設計を明らかにし、微少振動・聴覚センサーの開発へ向けた具体的知見を得ることを目的とする本年度は昨年度の解剖学的研究をさらに推し進め、コオロギの鼓膜器官が音受容において、1. 鼓膜の機械的振動、2. 気管による振動増幅、3. 流体(聴覚リンパ液)移動による感覚細胞の機械的刺激、という3つの過程を経ることを明らかにした。このことは鼓膜器官の音受容過程が脊椎動物のそれと似ていることを意味する。振動増幅から流体移動への変換過程では半透明のクチクラ装置が介在しており、これをクチクラコア(cuticle core)と命名した。このクチクラコアはキチン質からなるが、成虫脱皮直後には存在しておらず、約1週間かけて徐々に自己組織化的に形成される。また、脛節の長軸方向に対し感覚細胞を斜めに配置することで省スペースを実現していることがわかった。また、京都大・農学部の森直樹氏、島津製作所との共同研究により、100個体以上のコオロギから基底膜の内部に存在する聴覚リンパ液をガラスキャピラリーを用いて採取し、そのイオン組成を発光分光分析装置(ICPE9000)を用いて調べた。また、北大・工学部の岡嶋孝治氏との共同研究により、聴覚器を構成する組織の粘弾性計測も進めた。結果を総括すると、コオロギ聴覚器の基本設計については解明することができた一方、リンパ液のイオン組成、聴覚器のサブセルラー領域の粘弾性計測については技術的な難易度の高さに加え、個体差が大きいため、未だに確固とした特徴を得るまでには至っていない。よって達成率は60%と自己評価する。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Zoomorphology
Volume: (印刷中) Issue: 3 Pages: 273-284
10.1007/s00435-014-0225-8
生物模倣
Volume: 未定
生物科学
Volume: 65 Pages: 102-107
http://www.es.hokudai.ac.jp/labo/nishino/