Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
ヒトは物体の色を容易に判断できる。しかし、物体画像には陰影や光沢といった物体の色とは異なる成分が重なっており、これらの成分を除去しなければ物体の色は認識できない。それがどのような神経メカニズムによって成し遂げられているのか、そもそも物体色の成分を抽出した情報表現が脳に存在するのかは明らかでない。色情報は大脳皮質の腹側経路をたどり、最終的に下側頭皮質に到達する。色認知に重要なこの領域であれば、物体の色を抽出した結果がニューロン活動に反映されているかもしれない。これを確かめるために、色と陰影と光沢を独立に操作した刺激を用意し神経応答を比較する実験を行った。昨年度に引き続き、細胞の色選択性が刺激輝度によってどのように影響されるかを一様画像により調査した。さらに陰影をもった物体画像への色選択性応答を測定し比較した。その結果、刺激輝度に依存せず不変的な色選択性特性を持つ細胞が見つかる一方で、特定の輝度に対して極めて強い色選択性応答を示す細胞、さらに、輝度に応じて最適色が色平面上をスライドしていく細胞が見つかった。物体画像に対しては一様画像と同一の色選択性応答を示すことが多く、細胞にとって最適輝度条件での色選択性応答と最も相関係数が高かった。このことは、下側頭皮質において不変的な物体色情報表現を行っているという考えを支持する。また、物体の輝き感認識を生み出す錯視について、刺激輝度に依存しない明るさ向上現象を発見した。一様な白色領域の周辺に明暗のグラデーションを重ねると輝き感や明るさ感が生み出されることが知られている。この明るさ感向上はスクリーン背景を一定にしたもとで、画像刺激の輝度を変えても一定の比率で生じること、灰色と認知されている条件であっても明るく見えることがヒト心理実験により明らかになった。今後、物体色と光源色の認識との関係性を調査する際の応用が期待できる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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