Compiling the Research Achievements
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
戦争と植民地支配に由来する地域的相互不信に対して、政治的な次元での「反省」が表明され、二国間歴史共同研究の試みも実行されてきたが、従来の研究は感情自体を扱えないため政治闘争に巻き込まれがちで、歴史研究も細かな実証研究に終始した。本研究は、東アジアの伝統でもある歴史学を、欧米理論の継承に流されがちな紛争解決学と結び、諸分野の成果を取り込み「学知」として体系化したもので、記憶・感情・価値の融合したある種の複合体から、「国民」の感情的摩擦を認識する基盤を提供している。本研究により、冷静に国民相互の対話を行う知的基盤を拡充させていく。
領域代表者を中心に米国ハーバード大学を拠点とした会議をイェンチン研究所とともに4月に開催した。6月にオランダのアムステルダムのNIOD(国立ホロコースト・戦争研究所)と米国の歴史と記憶の対話研究会との合同で開催された会議に代表者が参加した。多言語化対応を前提とする東アジア歴史紛争和解事典を、文化記憶班と協力しつつウェブサイト上に構築した。明石書店から各計画研究班の成果を凝縮した『和解学叢書』全六巻を刊行した。各班が担当する巻も併せて、その中から英語での執筆に耐えられる論文を選び、かつ、国際的なネットワークによって得られた研究協力者とともに、英語による出版“Belated Justice and enduring justice in East Asia”(仮題)を準備中である。各班が責任を持って、和解学連続講座を開いて、研究成果の社会的還元に務めた。ハーバード大学のグロリア・アイィー講師を招き真実和解委員会の世界における展開が紛争解決後のナショナリズムの展開とどのように絡まるのかという視点から和解学の意義を評価いただき、また、コロンビア大学のキャロル・グラック名誉教授をまねき、記憶研究と国際和解学との協力の可能性を成果の還元を兼ねて議論した。各国の国益を目的にナショナリズムを安易に政治利用させない仕組みを、国際的な知的連携によって構築していくことが必要であり、まずは感情自体がどのように摩擦し、歴史問題を生むのかを冷静に構造的に把握し議論する国際的な議論の場が必要であるという認識を共有した。最後に元外交官や、現役のジャーナリストを交えて、現代の政府間での妥協が進む日韓関係を念頭に成果を報告し最終報告書に盛り込んだ。他者への共感能力を前提とした国内における官民のコミュニケーションの重要性と、国際的協力を念頭にした他国民への相互共感を発展させる可能性を明確化した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 Other
All Int'l Joint Research (2 results) Journal Article (11 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results, Invited: 2 results) Book (5 results) Remarks (1 results) Funded Workshop (2 results)
Odysseus : 東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻紀要
Volume: 27 Pages: 83-111
10.15083/0002007356
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/2007356
ワセダアジアレビュー
Volume: 25 Pages: 74-75
Volume: 25 Pages: 20-23
浅野豊美『和解学叢書6 想起する文化をめぐる記憶の軋轢とメディア』
Volume: 6 Pages: 25-84
Volume: 6 Pages: 299-327
川島真編ほか『サンフランシスコ講和と東アジア』東京大学出版会
Volume: 1 Pages: 1-33
『Intelligence』
Volume: 22 Pages: 84-95
"Japan Review"
Volume: 36 Pages: 169-199
井川充雄ほか編『入門メディア社会学』ミネルヴァ書房
Volume: 1 Pages: 20-38
崔 銀姫編『東アジアと朝鮮戦争七〇年 メディア・思想・日本』明石書店
Volume: 1 Pages: 153-187
波多野澄雄編『国家間和解の揺らぎと深化』明石書店
Volume: 1 Pages: 19-47
https://www.waseda.jp/prj-wakai/