2023 Fiscal Year Comments on the Screening Results
日本列島域における先史人類史の統合生物考古学的研究ー令和の考古学改新ー
Project Area (Abbreviation) | 統合生物考古学 |
Project/Area Number |
23A102
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
|
Area Organizer |
山田 康弘 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40264270)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
Summary of the Research Project |
先史時代の考古学は、現在大きな曲がり角に来ている。それは、従来の純粋考古学的研究方法による成果が、自然科学的分析結果によって修正を余儀なくされる事態が多発している現状からも明らかである。今日、純粋な考古学的手法のみでは、もはや過去の実像に迫ることは不可能であると言ってよい。この危機を脱するためには、考古学そのものが従来のような文系学問領域からシフトして、新たな学問領域へと生まれ変わる必要がある。そこで本研究領域では、日本において、特に人骨・動植物遺存体などの出土資料を主たる対象として、現在の考古学的手法に、年代測定、同位体分析、ゲノム分析などの自然科学的な手法を織り交ぜた総合的学問領域であるintegrative bioarchaeologyの構築を提唱する。
|
Outline of Opinions Expressed in the Review Results |
本研究領域は、伝統的な考古学に、年代測定、同位体分析、ゲノム分析などの自然科学的な手法を取り入れて、新たに文理融合の統合生物考古学の構築をめざす意欲的な研究である。人間(ヒト)の活動を中心としながらも、人骨だけでなく動植物遺存体などの多彩な諸出土資料を対象として、最新のゲノム解析、同位体分析の手法を駆使して、対象物の年代測定と構造分析を行う点で、方法論的にも独自性が認められる。研究領域全体が非常に有機的に関係づけられ、人文社会系と自然科学系の研究者が三つの計画研究(研究の方法論別、対象地域別、研究対象別)に配置されて、相互に緊密に連関しながら共同研究を実施する、非常に優れた研究計画である。日本列島を中心とした研究対象・資料自体が圧倒的に豊富であり、その素材分析を本研究領域により推進できれば、世界の学界に先駆けた、極めて独創的な統合生物考古学の構築が可能になり、日本でしか実施できないという点も踏まえ、人文社会科学分野における日本の学界の学問的先端性、優位性を示すことができる数少ない学術研究となりうる。また、既に確立されてきた日本考古学の優れた研究成果を更に学際的に強化して、一気に世界最先端の水準に引き上げることができるような「比較優位性」を有していることから、研究成果の英語論文による積極的な発表を期待したい。さらに、研究成果の「社会実装」の点でも、古日本人論、日本人起源論など、社会一般で関心の高い話題をめぐり、客観的な研究結果に基づいた問題提起ができ、現代のエスニシティや言語の理解にまで射程を広げていることから、新たな日本人論が構築される可能性がある。
|