2023 Fiscal Year Comments on the Screening Results
1000テスラ超強磁場による化学的カタストロフィー :非摂動磁場による化学結合の科学
Project Area (Abbreviation) | 1000テスラ科学 |
Project/Area Number |
23A201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Area Organizer |
松田 康弘 東京大学, 物性研究所, 教授 (10292757)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Summary of the Research Project |
磁場は相対論的電気効果であり自然界形成に不可欠であるが、地球上では一般にその効果は弱く、摂動的である。一方で、地球磁場の16桁倍にも及ぶ宇宙空間での強い磁場は非摂動磁場効果を与えるが、それを理解するための学問は確立していない。本領域では最近開発された世界最強の1000テスラ超強磁場を用い、地球上自然界における非摂動磁場効果を明らかにする。1000テスラの磁場が電子スピンに与えるエネルギー変化は温度換算で1350ケルビンであり、鉄のキュリー温度や金の融点を上回り、化学結合への破壊的効果である化学的カタストロフィーを実現できる。固体から分子、生体分子、素粒子、プラズマを対象として、磁場による新結晶創成などの革新的現象から自然界を形成する機序の本質に迫る。
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Outline of Opinions Expressed in the Review Results |
本研究領域は、1000テスラ実験室内でようやく可能になってきたフロンティアにより、固体物性、分子・生体分子、プラズマ・素粒子・宇宙に及ぼす影響を分野を超えて探り、新たな物理を紡ごうとする意欲的な研究であり、学術変革領域研究としてふさわしい。地球上の摂動的磁場とは全く異なる非摂動的環境で起きうる未踏の化学反応や安定結晶構造を解明し、更にこれを用いて無磁場での未知の準安定構造・現象を実現する指針を得て新たな学理を構築するという波及効果も期待できる。一方、1000テスラの磁場を実現できる研究機関は東京大学物性研究所のみであり、参加する多くの研究機関で実現できるのは最大100テスラまでである。100テスラまででの実験から新たな学理の兆候を捉えて吸い上げ、1000テスラレベルでの検証や発見につなげる多様な道筋を用意し、競わせ、追究することは本研究領域の成功の鍵であり、共同利用・共同研究拠点である物性研究所の機能を発揮して、100テスラと1000テスラとの間のギャップを越えることが必要である。また、分子化学反応及びプラズマ・宇宙の研究班を活性化し、固体物性研究グループとの本質的な連携で初めて生まれる学理を明らかにし、分野融合を図ることが期待される。
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