2015 Fiscal Year Research-status Report
共感性の進化・神経基盤
International Activities Supporting Group
Project Area | Empathic system |
Project/Area Number |
15K21739
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 壽一 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30172894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊水 健史 麻布大学, 獣医学部, 教授 (90302596)
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Project Period (FY) |
2015-11-06 – 2018-03-31
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Keywords | 共感性 / データ管理 / 動物倫理 / 共同研究 / 若手支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、採択時期が11月だったこともあり、各計画班とも、次年度以降の共同研究スキーム策定のため、共同研究先を訪問し話し合う計画を立てていたが、昨年11月のパリ同時多発テロ事件以来、ヨーロッパ、特にフランス、ベルギーへの渡航自粛が相次ぎ、計画していた出張のうち、4件のみの実施となった。 渡辺班 1件(フランス(ストラスブール大)3月)霊長類(アカゲザル・トンケアンマカク)の種間比較研究 長谷川班 1件(フィンランド(タンペレ大)・イギリス(ロンドン大)1月)自閉スペクトラム症者を対象とした感情的共感の心的基盤研究 村山班 1件(ヘルシンキ大より共同研究者1名招へい 2月)鳥類の情動伝染に関わる分子基盤の解明 菊水班 1件(ニューヨーク(ニューヨーク大)12月)マウスの社会性に関わる脳部位での電気生理学的特性の把握。菊水班では、これまでに幼少期母子間の関係性が共感性の発達に影響を与えることを見出しており、母子分離を経験したマウスでは痛み情動伝染が障害されるという実験結果を得た(論文投稿中)。母子間のやり取りに係る分子が共感に関わる脳部位を育てることから、母子のコミュニケーション時に仔の脳内での変化を追跡したところ、帯状回におけるオキシトシンの分泌が認められた。オキシトシンはヒトの向社会性に関与する分子であり、このオキシトシンの作用を明らかにする必要があることから、NY大学のR. Froemke教授と、幼少期に帯状回でオキシトシン作用を障害したマウスの社会性にかかわる脳部位での電気生理学的特性を把握するため共同研究を始めることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の項目でも述べたように、欧州を中心とする政情不安のため、平成27年度中に共同研究先を訪問することが難しいケースもあったが、平成28年度に入り、続々と計画実施の連絡が入ってきており、今年度中に遅れは取り戻せると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
菊水班では、前述のNY大学のR. Froemke教授と本格的に共同研究を開始し、10月より5ヶ月間ポスドクを長期研修に派遣する計画がある。またシカゴ大学のP.Mason教授(世界に先駆けてラットの援助行動を明らかにした)とは、援助行動が持たらす前頭葉の機能、特にストレス脆弱性に関しての共同研究を開始し、7月より3ヶ月間大学院生を派遣する。 長谷川班では、動物の共感に関する国際共同研究を3本走らせることが決定しており、すでにUKへのポスドク派遣、UKからの共同研究者招へいが決まっている。渡辺班についても、霊長類の種間比較研究に加え、8月にマーデブルグ大とデグーの協力行動に関する共同研究を開始し、パリ大学とのオウムの協力行動に関する共同研究では、11月に若手研究者をパリへ派遣し予備調査を行う。また秋にはドイツのドルトムント工科大学へ大学院生を派遣し、イヌ・ネコの社会行動に関する予備調査を行う。日本、ニュージーランド、オーストリア、ドイツの4研究機関の連携で、協力行動に関するカラス複数種間の比較研究プロジェクトも立ち上がっており、9月にPIと大学院生がウィーン大学を訪問し、データ解析等を行う。 亀田班では、山岸俊男教授(分担者)が、信頼の国際比較調査のため開発されつつあるウェブベースの実験プラットフォームを利用し、共感性のあり方が社会のあり方に応じて変化する可能性を実験により検討する国際共同研究をアムステルダム大学のBalliet准教授と開始する。 村山班では、7月-9月にエジンバラ大学のWeiss教授を招聘し、霊長類や猫などの共感性に関わる性格評定や行動テスト、関連遺伝子解析を実施予定。尾仲班では、ハイデルベルグ大学のGrinevich教授と、局所のバゾプレシン産生ニューロンあるいはオキシトシン産生ニューロン選択的な遺伝子操作による共感性行動への効果を検証するための共同研究を行う。
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Causes of Carryover |
初年度については、採択後実質4ヶ月間の活動となったため、各計画班とも、共同研究先を訪問し今後の研究スキームを話し合い、次年度より共同研究を開始する予定にしていたが、昨年11月のフランス同時多発テロ事件以来、欧米の政情不安が高まり渡航を自粛せざるを得ない場合が生じたため、当初計画していた渡航計画の半分程度の実施となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に実施できなかった渡航計画を、次年度の早い時期に実施し、実質的な研究の実施に結びつける。また、実施に伴う、若手研究者の長期派遣、共同研究者の日本招聘についても、計画に則って実施できるよう調整していく。次年度使用計画詳細は今後の推進方策の欄に記載したが、長谷川班分担者の橋彌准教授が、カナダ・アルバータ大学の増田准教授のラボとの共同研究を開始し、7月に先方より学生2名を短期受入することをここに追記させていただく。
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Research Products
(5 results)