2018 Fiscal Year Research-status Report
関係性を中心とした融合型人文社会科学のための国際学術ネットワークの確立と活性化
International Activities Supporting Group
Project Area | Establishing a new paradigm of social/human sciences based on rerational studies: in order to overcome contemporary global crisis |
Project/Area Number |
16K21736
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
酒井 啓子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (40401442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 泰行 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20328678)
落合 雄彦 龍谷大学, 法学部, 教授 (30296305)
久保 慶一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30366976)
石戸 光 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (40400808)
五十嵐 誠一 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (60350451)
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
山尾 大 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (80598706)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 国際関係 / グローバルイシュー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、海外の研究機関と協力して国際会議を海外で実施した。H30年度は紛争をテーマに12月21-22日、セルビア社会科学研究所との共催で、ベオグラード市内のHotel Ziraの会議場にて、国際会議「Relational Studies on Global Conflicts: Toward a New Approach to Contemporary Crises」を開催した。本国際会議は、グローバル関係学の主要な分析対象の1つである、多様なアクターが重層的に関与する地域紛争と、そうした紛争を経験した国・地域における紛争後の秩序の再構築を研究テーマとして取り上げ、2日間で合計8つのパネル、全29の研究報告を行った。会議には、日本、シンガポール、セルビア、英国、ドイツ、イタリア、ウクライナ、スロヴェニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロから参加した報告者に加え、セルビア在住の大学院生、外交官(在セルピア日本大使含む)や国際機関の職員等も聴衆として参加した。参加者の内訳は日本からの参加者15名、海外からの参加者30名であった。 また、H30年度後半以降は分担者の石戸がタイ・マヒドン大学と31年度の国際会議共催可能性を巡り、頻繁に討議を重ねた。 一方で、H30年度に開催された世界中東学会、世界政治学会、世界社会科学フォーラムに、国際支援班から酒井、末近、久保、山尾が研究報告、パネル報告を行い、これらを通じて海外の研究者にグローバル関係学を発信したとともに、国際大会に参加していた国際ジャーナル・英文書籍出版社と会談し、今後の英文での研究報告書の出版可能性について討議した。また、領域で運営するウェブでのオンライン・ペーパーについて、これまで論文としてのカテゴリしか設けていなかったが、講演録や調査報告のカテゴリを新設して、国際会議報告を掲載するようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本新領域事業が研究活動の中核とする国際会議の開催を「グローバル関係学」が取り組む最重要課題である「紛争」をテーマに、まさに紛争を繰り返し経験した南東欧の旧ユーゴスラビア諸国の中心であるセルピアで実施できたことは、他の地域で行ういかなる紛争関連の会議以上に、ビビッドで現実的な研究討議が展開できたという点で、きわめて有意義であった。とりわけ、海外からの報告者のうち半数が旧ユーゴスラビア諸国からの参加者で、かつての内戦状況を超えて、紛争の歴史的、政治的、経済的側面と幅広く議論できたことは、貴重であった。また周辺の紛争経験国(ウクライナ)からの参加もあり、参加者からは、南東欧諸国出身の研究者が一堂に集う国際会議はこれまでにほとんどなく、研究の域内ネットワーク構築にも重要な機会であったと高く評価された。 同時に、研究者だけではなく、実務関係者の参加も得て、紛争の具体的な紛争解決方法を論じる機会となったことも、議論を豊かなものにすることであった。 統一テーマである「紛争」に関するテーマと並行して、本会議では、新領域の各計画研究のうち二つが、それぞれの計画研究で実施している研究の中間報告的報告パネルを組んだ。前年度のシンガポール国際会議では、「グローバル関係学」の提起のみしか行えなかったが、二年半の研究期間を経て中間報告が国際的に発信できたことは、今後の研究の推進のために、大きな弾みとなった。具体的には計画研究B02がSURVEY-DATA ANALYSES ON THE SOCIETIES IN/ AFTER THE CONFLICTとのパネル題で末近、山尾、久保が、計画研究A02がINTER-STATE AND REGIONAL CONFLICTS IN SOUTH-EAST AND WEST ASIAとのパネル題で石戸、鈴木(あやめ)、松尾がそれぞれの研究報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き海外の研究機関と協力して国際会議を海外で実施するが、今年度は分担者の石戸がタイ・マヒドン大学での勤務が多くなるため、12月初めに同大学との共催で、バンコクにおいて「資源」(resources)と「移民・難民」(migrants and refugees)を主軸とした地域横断的、階層縦断的、新学術領域的な研究報告および討論することを目的として、国際会議を実施することが決定している。そこでは、8パネル程度を構成し、参加者として分担研究者、公募研究者、研究協力者の他、国連バンコクオフィス、ASEAN事務局、国際機関メコン機構やフィリピンの大学関係者らを招聘する予定である。分担者の石戸を中心に会議準備を行うが、計画研究A02分担者の鈴木絢女氏がフィリピンでのサバティカル研究にあたっていることから、同氏を新たに国際活動支援班の分担者とし(代わって落合氏を国際支援班から総括班に移す)、協働して準備にあたる。また東南アジア政治を専門とする分担者の五十嵐氏の協力を仰ぐ。 また、来年度以降の国際会議開催について、H29年度に協力相手校として交渉を行ったロンドン大学SOAS中東研究所や、その他の国際会議開催予定の現地開催校との協議を進める。さらには、最終成果報告のための国際会議をどのような形で開催するかについて、準備と討議を進める。 新領域事業では、和文の研究成果報告書を叢書シリーズとして出版する予定であるが、英文での海外発信にも力を入れ、まずはオンライン・ペーパーにて英文での論考を掲載し、さらには活字化し論文として国内外のジャーナルなどへの投稿を促して、海外の研究者にグローバル関係学を発信するよう尽力する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた背景には、以下のような理由がある。H29, H30年度と、国際会議の実施においてできるだけ無駄を省き、節約に努めた結果、想定内の金額での国際会議の実施が可能となった。その分が翌年度以降に繰り越す原因となったが、国際会議は本事業後半に大規模な国際会議の計画を予定しており、そのためにできるだけ資金的余裕を確保しておきたいと考えて運営してきた。特に最終年度のR2年度には国内外で大規模の国際会議を実施するとともに、最終成果の国内での国際会議会議開催もまた行うため、当初計画以上に資金が必要となる可能性が高く、そのための資金の確保が必要である。さらに、H31年度はバンコクにて国際会議を実施する予定であるが、共催校のマヒドン大学国際キャンパスはバンコクから離れており、登壇者の移動のための経費、あるいはバンコク内で実施することになった場合はホテルなどでの会場借り上げ費がかかる可能性があり、当初予定以上に余裕をもってその実施資金を考えておかねばならない。 分担者に配分済みの資金の一部については、国際活動支援班の会議の回数が総括班と合同で実施したことで節約となった部分があるが、その分、H31年度以降の国内旅費などで必要となる。
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