2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~
Project Area | New expansion of particle physics of post-Higgs era by LHC revealing the vacuum and space-time structure |
Project/Area Number |
16H06488
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅井 祥仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60282505)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | LHC / 超対称性粒子 / ヒッグス粒子 / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒッグス粒子の発見により、「素粒子」自体の研究から、素粒子を使って「時空や真空」を探る新しい段階へ進みつつある。本領域は、衝突エネルギーを倍増させたLHC加速器を用いて、H27年度からH30年度まで合わせて、170fb-1近いデータを収集できた。予測を超える大きな成果であり、4つの実験計画班を中心に領域全体で実験遂行を行った成果である。 1) ヒッグス粒子と他の素粒子との結合の強さを測定した。力を伝えるゲージ粒子との結合は、2012年の発見の段階で測定されていたが、28,29年度のエネルギーを倍増した実験から、物質を形成するフェルミオンとの結合も測定し、ボトムクォーク(平成30年8月プレスリリース)、トップクォーク(平成30年6月プレスリリース)、タウレプトンとの結合の強さを誤差10-20%で測定した。フェルミ粒子の質量起源もヒッグス粒子であることが分かった。研究項目Bの成果ではあるが、データクォリティーや較正、バックグラウンドの解明など、領域全体で望んだ成果である。これらの研究の主責任者や副責任者を、本領域の研究者が務めるなど中心的な役割を果たしてきた。 2)時空の研究で、超対称性に起因する暗黒物質の探索を精力的にLHCで行い、従来のBino中心の研究から、Higgsino/Wino粒子を探索する消失する飛跡検出器の探索方法を本領域が開発提案して、新しい方法に依る探索が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度からH30年度まで合わせて、170fb-1近いデータを収集できた。これから、これらのデータを用いた解析を進めていく、H29年度までのデータ解析を進め論文として発表することは、世界中の研究者のグループ全体で議論した結果、行わないこととしたため、H29年度いっぱいのデータは、上に挙げたヒッグスの結合強度測定以外は行われなかったが、全てのデータを用いた新しい解析方法の確立と、将来計画のTDRの作成などを行った。H30年11月に東京で本領域が主催して、LHCでのヒッグス粒子の詳細から、真空の構造を探り、宇宙のバリオン優位の起源などの解明を進める国際会議を開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度からH30年度まで合わせて、170fb-1近いデータを収集できた。それらのデータの解析を進め、 1)現在観測されている小さな乖離(2-3σ程度)の理解、LHCbでのアノマリーに対応する探索を進める。 2)超対称性粒子や電弱対称性の破れの起源の可能性となる現象の探索は、より系統的に行い、漏れがないように進める。特に、探索している粒子(グルイーノやスカラートップクォーク、チャージーノなど)がニュートラリノとの質量差が比較的小さい領域は、検出器の理解やバックグラウンドの理解が鍵になるため、領域全体や公募研究の成果とあわせて情報を共有して研究を進めていく。
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