2019 Fiscal Year Annual Research Report
ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~
Project Area | New expansion of particle physics of post-Higgs era by LHC revealing the vacuum and space-time structure |
Project/Area Number |
16H06488
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅井 祥仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60282505)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 超対称性粒子 / ヒッグス粒子 / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒッグス粒子の発見により、「素粒子」自体の研究から、素粒子を使って「時空や真空」を探る新しい段階へ進みつつある。本領域は、衝突エネルギーを倍増させたLHC加速器を用いて、H27年度からH30年度まで合わせて、170fb-1近いデータを収集できた。予測を超える大きな成果が得られた。1) ヒッグス粒子と他の素粒子との結合の強さを測定した。物質を形成するフェルミオンとの結合も測定し、ボトムクォーク、トップクォーク、タウレプトンとの結合の強さを誤差10-20%で測定した。力を伝えるゲージ粒子ばかりでなく、フェルミ粒子の質量起源もヒッグス粒子であることが分かった。2) 世代の解明:また、第2世代の素粒子であるミュー粒子とヒッグス粒子の結合の強さを測定し、世代の違いをヒッグス粒子が作っていること分かった。3)ヒッグス粒子などの精密測定より、我々の宇宙が安定ではなく、準安定であることが分かった。これは、我々の宇宙の真空が一番エネルギーが低いのではなく、別の最低エネルギーに相当する状態があることを示すものであり、新現象の存在を示唆する結果である。この新現象が何に対応しているかの研究を領域全体で進めている。最近観測されている、フレーバー関係の精密測定と標準理論の予言からの乖離や、muonのg-2の精密測定の結果のズレ、暗黒物質などの成果を包含して、新しい現象の可能性とLHCでの観測が期待される素粒子現象について、複数の可能性まで絞り込んだ。理論と実験や幅広い研究者が参加しており、LHCの第3期実験や公募研究での他の研究と合わせて、その可能性を検証できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度からH30年度まで合わせて、170fb-1近いデータを収集できた。これから、これらのデータを用いた解析を進め、上の成果が示す様に多くの成果が得られた。新現象のヒントが、どのような物理現象によるものなのかなどの議論を領域全体で進めている。令和2年度は、新型コロナウィルスの影響で、国際会議がキャンセルされるなどの影響を強く受けた。本領域の準備していた国際会議も、1年延期し、テラスケール研究会もオンライン開催になるなどの、研究発表を行い、議論を深める場の確保と言う点では、大きな影響を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度からH30年度まで合わせて、170fb-1近いデータを収集できた。それらのデータの解析を進め、 1)現在観測されている小さな乖離(2-3σ程度)の理解、LHCbでのアノマリーに対応する探索を進め、muon g-2などの成果と、合わせて本領域で得られたヒントと結びつける研究を領域全体で進める。 2)1)で鍵となるのは、超対称性粒子が暗黒物質となるニュートラリノとの質量差が比較的小さい領域であり、従来の研究ではカバーできていない。検出器の理解やバックグラウンドの理解が鍵になるため、領域全体や公募研究の成果とあわせて情報を共有して研究を進めていく。
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