2022 Fiscal Year Annual Research Report
Digitalization-driven Transformative Organic Synthesis (Digi-TOS)
Project Area | Digitalization-driven Transformative Organic Synthesis (Digi-TOS) |
Project/Area Number |
21H05207
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大嶋 孝志 九州大学, 薬学研究院, 教授 (10313123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 隆司 日本工業大学, 基幹工学部, 准教授 (30451991)
笹野 裕介 東北大学, 薬学研究科, 講師 (10636400)
高須 清誠 京都大学, 薬学研究科, 教授 (10302168)
安田 誠 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (40273601)
山口 潤一郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00529026)
菅 誠治 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (50291430)
跡部 真人 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (90291351)
外輪 健一郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (00336009)
滝澤 忍 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50324851)
椴山 儀恵 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (80447127)
矢島 知子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10302994)
宮尾 知幸 奈良先端科学技術大学院大学, データ駆動型サイエンス創造センター, 准教授 (20823909)
小島 諒介 京都大学, 医学研究科, 講師 (70807651)
武田 和宏 静岡大学, 工学部, 准教授 (60274502)
松原 誠二郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (90190496)
矢田 陽 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究チーム長 (70619965)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Keywords | 有機合成 / 機械学習 / 官能基評価キット / デジタル創薬 / フロー反応 / ベイズ最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
情報科学(機械学習)によるアプローチは、人間が実験科学を通じて行うのと同じ帰納的アプローチであり、極めて利用価値が高いと期待されるものの、有機化学への機械学習の利用は極めて限定的で、いまだ未発達である。そこで、本計画研究では、革新反応開発に機械学習を徹底活用(実験科学と情報科学の異分野融合)することで、化学選択性の触媒制御法開発の超加速を実現し、その基礎となる官能基標的触媒を網羅的に創出することを目的とし、(1)機械学習による反応条件最適化の超加速、(2)官能基評価キット活用による化学選択性の網羅的データ集積、(3)機械学習による新反応制御因子の顕在化、(4)機械学習によりデザインされた革新分子の合成と評価、(5)開発した革新反応の反応モジュール化とフロー反応での活用の検討を行う。R4年度は、計画班班員に加え、年度途中で加わった計画班の班員とともに、主に以下の検討を行った。 (1)実験化学者が機械学習を取り入れながら研究を行うための研究環境整備を行なった。①領域で作成する独自のデータベースに集積するデータのフォーマットを策定し、Google Formsを利用する方法に加え、電子実験ノートからAPIを利用してデータを抽出する方法で、データベース用のデータを作成し集積した。②機械学習を行うためのPython勉強会を複数回実施した。③①と②の環境整備を基盤に、機械学習を活用した共同研究推進のための橋渡しを行った。 (2)化学選択性の網羅的情報収集のための官能基評価キットを大量に準備した。そして、実際にキットを多くの班員に配布し様々な反応において評価を行った。 (3)フロー合成装置を有する拠点の設備を補強し、班員が実際にフロー合成装置を用いた検討を容易に実施できるようにした。 (4)各種シンポジウムでの発表や共催などを通じ、領域の活動の広報を行い、さらなる産学官連携強化を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)まず、実験化学者が日常の研究生活の中で機械学習を取り入れながら研究を行うための研究環境の整備に関しては、各班員および学生に向けた教育動画の作成と定期的な勉強会を通じてPythonの利用環境の構築は完了した。また、領域データベースのフォーマットに合わせたデータの抽出ができるように、電子実験ノートのテンプレートの変更とAPIの修正を行い、ほぼ完成させることに成功した。連続型変数(時間、温度、試薬の当量比など)のベイズ最適化の検討は多くの班員が実施できるようになったが、溶媒効果や触媒構造などのデジタル化が困難な離散型変数の最適化のために、総括班で新たなプロジェクトを立ち上げ、種々の機械学習手法の構築に成功した。特に、溶媒効果に関しては、実測及び量子化学計算によって得られた物理化学的パラメータの活用や、Fingerprintを活用した手法などの検討を行なった。また、金属触媒や有機触媒に関する機械学習に必要な特徴量を網羅したデータベースの構築の取り組みも開始した。 (2)官能基評価キットを用いた検討を行うため、26種の化合物をそれぞれを大量に購入あるいは合成しキットの準備を行った。それらキットを班員に配布し、各班員が開発した反応や汎用される基幹反応に対する評価を行い、化学選択性の網羅的なデータの収集を行うとともに、多くの興味深い結果を得ることに成功している。 (3)電解反応や光反応のフロー反応化を行うための共同研究を推進し、これらの反応条件最適化にベイズ最適化を利用することで少ない実験量での反応開発に成功している。 (4)領域主催および共催のシンポジウムを多く開催し、広報活動に努めるとともに、FlowSTなどとの話し合いを通じて、産官学連携を強めた。国際学会の開催はR5年度に持ち越しとなったため、国際的な情報発信はR5年度の重要課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度はR3年度の検討結果をもとに、(1)から(5)の項目に関して、以下の検討を行う。 (1)総括班として機械学習の教育用動画を作成するとともに、機械学習をチュートリアル形式で学ぶ若手勉強会を年に数回程度実施する。電子実験ノートから領域データベースへのデータ提供を簡便に行うためのAPIを作成する。また、電子実験ノートを利用していない班員のために、webからの入力により簡単にデータベース提出用のデータを作成するシステムを作る。また、領域のデータベースの運用を開始する。(2)官能基評価キットを活用した化学選択性の網羅的情報収集において、統計的手法を取り入れたより信頼性の高い手法を構築し、多くの班員が評価キットを利用することで、さらに多くの反応の化学選択性の網羅的情報収集を行う。反応の種類を拡張するとともに、見い出した正の添加効果に関して精査し、新たな触媒系の開発につなげる。(3)計算科学と情報科学を融合させ、代表的な不斉金属触媒、不斉有機触媒の特徴量を網羅したデータベースを構築する。それらを用いた機械学習を行うことで、不斉触媒反応の主制御因子の顕在化を行う。(4)現在進めているデジタル創薬に関する共同研究をさらに推進する。特に、機械学習によって提案された創薬リードの合成と生物活性評価を推進する。(5)バッチ反応のフロー反応化を推進するために、固相担持触媒反応、電解フロー反応、光フロー反応などの検討を加速する。
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