2012 Fiscal Year Annual Research Report
Replacement of Neanderthals by Modern Humans: Testing Evolutionary Models of Learning
Project Area | Replacement of Neanderthals by Homo sapiens: testing evolutionary models of learning |
Project/Area Number |
22101001
|
Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
赤澤 威 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70013753)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 洋久 国際日本文化研究センター, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10282625)
丸川 雄三 国際日本文化研究センター, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10390600)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ネアンデルタール人絶滅 / 現生人類の起源 / 旧石器時代の学習行動 / 学習能力の進化 / 狩猟採集民の学習行動 / 化石精密復元 / 脳学習機能 / 人類進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
交替劇が演じられたと推定される全域 (アフリカ、ユーラシア大陸) に分布する旧人ネアンデルタール・新人サピエンス遺跡を搭載するデータベース構築にとりくみ、2071遺跡 (2013年5月11日現在) を搭載するデータベースが完成した。当データベースの活用によって交替劇の経過を具体的証拠に依拠して検証するとともに、交替劇の経緯を、旧人ネアンデルタール・新人サピエンス両者の間の学習行動や文化の進化速度の違いなどの視点から記述・分析し、学習仮説を実証的に、しかもより普遍的に検証できることになった。その他の実績内容を列記する。 (1) 巨大データベースの完成によって、ヨーロッパ大陸中心に進められてきた交替劇を全地球規模で調査し、その経過をより普遍的に論じることが可能となった。また、データベースに搭載される詳細な属性データ (石器群、年代値等) の分析結果に基づいて、交替劇の経緯をこれまでになく具体的かつ詳細に復元記述することが可能となった。 (2) 現生狩猟採集民 (つまり、新人) の学習行動の実態調査から、文化的行動の習得・継承の基本となる模倣学習、創造性を生み出す主体的学習、それらを涵養する子どもの遊び集団の役割の重要性を確認するなど、旧人の学習行動の特性を考察する上で有用な作業仮説を提起した。 (3) 旧人と新人の間で異なる学習戦略が進化した要因、その能力差が両社会に文化の進化速度の違いをもたらすメカニズムなどを、数理モデルの記述・分析を通して検討し、学習仮説を裏付ける作業仮説を提起した。 (4) 化石頭蓋の高精度復元および化石脳を抽出する手法を開発し、その古神経学的分析のベースとなるヒトの脳学習機能マップ作成に取り組み、旧人・新人の学習能力差の解剖学的証拠を同定・記述する新分野の開発を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究班が進めてきた研究の種類内容と進展状況を以下に要約する。 A01「考古学資料に基づいた旧人・新人学習行動の実証的研究」は、交替劇を演じたとされる旧人・新人の遺跡遺物を精査し、交替劇の事実関係を世界規模で検証・復元し、併せて、交替劇の経緯を旧人・新人両者の考古学的証拠と結びつけて分析するための研究基盤を構築した。その結果、学習行動差を裏付ける数々の新知見を確認した。A02「狩猟採集民の調査に基づくヒトの学習行動の特性の実証的研究」は、狩猟採集民学習行動を実態調査し、狩猟採集社会では、文化的行動の継承には模倣学習、創造性を生み出す主体的学習、それらを涵養する子どもの遊び集団の役割がきわめて重要であることを確認した。 B01「ヒトの学習能力の進化モデルの研究」は、旧人と新人の間で生得的な学習戦略の違いが形成される過程を理論的に裏付ける数々の新知見を確認した。B02「旧人・新人時空間分布と気候変動の関連性の分析」は、交替劇の経緯を時代状況に対する適応行動と結びつけて記述・分析する上で有用な交替期環境情報基盤を創出し、旧人・新人遺跡時空分布、時代状況に対する両者の適応行動の違いを高精度で記述・分析するための古環境情報基盤を構築した。 C01「三次元モデリング技術に基づく化石頭蓋の高精度復元」は、学習能力の解剖学的証拠検出の基盤資料となる化石頭蓋の復元システムの構築とその高精度復元に取り組み、化石脳を数理的に復元する手法を開発した。C02「旧人・新人の学習行動に関する脳機能マップの作成」は、現代人脳の学習機能マップ生成に向けて、高精度脳形状推定に基づく旧人・新人化石脳の比較分析によって、ヒトの創造性の神経基盤の同定・記述・分析という全く未開拓な分野解明に繋がる手法の開発を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本領域の全体構想は、研究体制を構成するさまざまな分野 (研究班) の有機的な連携研究によって達成される。具体的には、各研究班のもとで、対象とする専門データの同定・記述・分析を進め、他分野との情報交換・相互理解・相互評価を経て学習仮説の検証に有用な知見を確認し、研究の進捗状況に応じて作業仮説を立案し、その成果を有機的に結びつけ、領域全体としての統合的知見を創出する。そのために、研究大会、班会議・研究会、連携研究会を共同研究の種類内容に即したテーマシンポジウムとして開催し、各班研究成果の情報交換、相互評価を促進する。以上が本領域を特徴づける連携研究の実効性を確保する研究プロセスである。
海外において活況を呈する世界的な交替劇研究の世界に、学習仮説という斬新な視点と独創的なアプローチをもってチャレンジした交替劇プロジェクトである。その我々の挑戦が世界的な交替劇研究にインパクトを与えることができるかどうか、交替劇論争に新たなページ、ブレイクスルーを開くことができるかどうか、それはこれからの残る2年、それに向けての推進方策、まさに正念場を迎えている。
海外研究の圧倒的な勢いに埋没せず、それを乗り越える手立て、われわれ世界では、研究成果の発進力、関連する分野の国際舞台に向けて発信し続け、評価を仰ぐこと、それにつきる。交替劇プロジェクト研究成果の国際舞台への発信については、ドイツの著名な出版社 Springer の協力が得られルことになった。プロジェクトの成果を、今年度出版する第1回国際会議の Proceedings を皮切りに全十数巻のSpringer ネアンデルタール・新人サピエンス交替劇シリーズ (REPLACEMENT OF NEANDERTHAL BY MODERN HUMANS SERIES) として刊行できることとなった。
|
Research Products
(6 results)