2013 Fiscal Year Annual Research Report
ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究
Project Area | Replacement of Neanderthals by Homo sapiens: testing evolutionary models of learning |
Project/Area Number |
22101001
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
赤澤 威 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70013753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 洋久 国際日本文化研究センター, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10282625)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | ネアンデルタール人 / 現生人類 / 旧石器時代の学習行動 / 学習能力の進化 / 狩猟採集民の学習行動 / 化石復元 / 脳学習機能 / 人類進化 |
Research Abstract |
旧人ネアンデルタールと新人サピエンスの交替劇プロセスを検証するために不可欠な遺跡データベースが大幅に拡充した。3205遺跡 (2014年2月14日現在) について、文化層情報、年代値情報、石器伝統情報、文献情報の属性レコードが搭載される総合データベースである。これによって交替劇の経過を具体的に検証できるとともに、旧人・新人を学習行動の違いなどの視点から記述・分析し、学習仮説を地球規模で実証的に検証できることとなった。その他の実績内容概要を列記する(詳細は各研究班実績報告書参照)。(A01班) ヨーロッパ大陸中心に進められてきた交替劇を地球規模で調査し、総合的に論じることが可能となった。また、データベースに搭載される属性データの分析結果に基づいて、交替劇の経緯を詳細に復元記述することが可能となった。(A02) 現生狩猟採集民 (つまり、新人) の学習行動の実態調査から、文化的行動の習得・継承の基本となる模倣学習、創造性を生み出す主体的学習行動など、旧人の学習行動の特性を考察する上で有用な作業仮説を提起することが可能となった。(B01) 旧人と新人の間で異なる学習戦略が進化した要因、その能力差が両社会に文化の進化速度の違いをもたらすメカニズムなどを、数理モデルの記述・分析を通して検討し、学習仮説を裏付ける作業仮説を提起することが可能となった。(B02)交替期における旧人・新人の学習行動の違いと気候の時空間変動の関係を考察する上で有用な作業仮説を提起することが可能となった。(C01) 化石頭蓋の高精度復元法を開発し、旧人化石脳の仮想復元に成功した。(C02) 旧人化石脳の古神経学的分析のベースとなるヒトの脳学習機能マップ作成に取り組み、旧人・新人の学習能力差の解剖学的証拠を同定・記述する新分野の開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究班が進めてきた研究の種類内容と進展状況を以下に要約する。 A01「考古学資料に基づいた旧人・新人学習行動の実証的研究」は、アフリカ・ユーラシア旧人・新人の遺跡遺物を精査し、両者の考古学的証拠と結びつけて交替劇経過の詳細を記述分析した結果、交替劇経緯の多様性が明白になった。A02「狩猟採集民の調査に基づくヒトの学習行動の特性の実証的研究」は、狩猟採集民学習行動を実態調査し、狩猟採集社会では、文化的行動の継承には模倣学習、創造性を生み出す主体的学習、それらを涵養する子どもの遊び集団の役割がきわめて重要であることを確認した。B01「ヒトの学習能力の進化モデルの研究」は、旧人と新人の間で生得的な学習戦略の違いが形成される過程を理論的に裏付ける数々の新知見を確認した。B02「旧人・新人時空間分布と気候変動の関連性の分析」は、交替劇の経緯を時代状況に対する適応行動と結びつけて記述・分析する上で有用な交替期環境情報基盤を創出し、旧人・新人遺跡時空分布、時代状況に対する両者の適応行動の違いを高精度で記述・分析するための古環境情報基盤を構築した。C01「三次元モデリング技術に基づく化石頭蓋の高精度復元」は、学習能力の解剖学的証拠検出の基盤資料となる化石頭蓋の復元システムの構築とその高精度復元に取り組み、化石脳を数理的に復元する手法を開発した。C02「旧人・新人の学習行動に関する脳機能マップの作成」は、現代人脳の学習機能マップ生成に向けて、高精度脳形状推定に基づく旧人・新人化石脳の比較分析によって、ヒトの創造性の神経基盤の同定・記述・分析という全く未開拓な分野解明に繋がる手法の開発を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本領域の全体構想は、研究体制を構成する研究班の有機的な連携研究によって達成される。 具体的には、各研究班のもとで対象とする専門データの同定・記述・分析を進め、他分野との情報交換・相互理解・相互評価を経て学習仮説の検証に有用な知見を確認し、研究の進捗状況に応じて作業仮説を提起し、その成果を有機的に結びつけ、領域全体としての統合的知見・所見を創出する。そのために、研究大会、班会議・研究会、連携研究会を共同研究の種類内容に即したテーマシンポジウムとして開催し、各班研究成果の情報交換、相互評価を促進する。 第2回国際会議RNMH2014(会期:2014.11.30-12.6、会場:北海道伊達市)を開催する。本交替劇プロジェクトの成果を国際舞台で評価を仰ぐ。(2014.5.8日現在:19ヶ国119名) 本交替劇プロジェクトでは、研究成果を国際舞台で評価を仰ぐためには研究目的・内容・成果を包括的に発信する国際的出版物の刊行が欠かせないとの観点からその実現に努め、Springer 新シリーズ:Replacement of Neanderthals by Modern Humans Series(全13巻)として実現した。その第1号、2号は、第1回国際会議RNMH2012の成果刊行物として出版済みである。次々計画されるわが国の大型研究プロジェクトについては、研究成果を関連分野の専門誌への投稿や学会発表に代表される通常の発信とともに、研究全貌を包括的に発信公表する独自の発進力が問われていると考える。専門誌・学会発表だけではプロジェクト全体像を評価することができないからである。本シリーズの刊行によって、交替劇プロジェクトを国際舞台で評価を仰ぐ機会が大幅に拡大し、プロジェクトに関する相互理解・相互評価の機会が促進される。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Paleoenvironment of the Fore-Baikal region in the Karginian interstadial: Results of the interdisciplinary studies of the Bol’shoj Naryn site2013
Author(s)
T. Sato, Khenykhenova F., Simakova A., Danukalova G., Morosova E., Yoshida K., Kunikita D., Kato H., Suzuki K., Lipnina E., Medvedev G. and Martynovich N.
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Journal Title
Quaternary International
Volume: in Press
Pages: in Press
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Modern Human Dispersal into Eurasia: Preliminary Results of the Multi-Disciplinary Project on the Replacement of Neanderthals by Modern Humans2013
Author(s)
K. Sano, S. Kadowaki, M. Naganuma, Y. Kondo, K. Shimogama, K. Nagai, H. Nakata, T.Omori, M. Yoneda, H. Kato, A. Ono, O. Jöris, and Y. Nishiaki
Organizer
Abstracts of 3rd Annual Meeting of European Society for the study of Human Evolution (ESHE)
Place of Presentation
Vienna, Austria.
Year and Date
20130919-20130920
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