2016 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of novel hybrid catalysts by introducing a transition metal complex into an antigen binding site of monoclonal antibody
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
15H05807
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 浩靖 大阪大学, 理学研究科, 教授 (00314352)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | モノクローナル抗体 / キラル / 不斉反応 / パラジウム錯体 / ビナフチル誘導体 / 光学分割 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品の製造などにおいて不斉合成や光学分割は重要な技術である。一方の光学異性体を特異的に認識する結合素子として作製された抗体は、特異的な光学分割剤や不斉触媒としての利用が期待される。本研究では、ビナフトール誘導体(BN)の2種の光学異性体であるBN(R)、BN(S)に特異的に結合するモノクローナル抗体をそれぞれ作製した。BN(R)を特異的に結合するモノクローナル抗体(R44E1)とBNのラセミ体を混合し、限外濾過膜を介した遠心分離操作を行うだけで、BN(S)が高い光学純度で瞬時に得られるシステムを構築することに成功した。同様に、BN(S)を特異的に結合するモノクローナル抗体(S1E11)を用いるとBN(R)が精製できた。 また、昨年度に引き続き、パラジウム錯体を特異的に結合することができるモノクローナル抗体を作製した。パラジウム錯体をキャリアタンパク質に結合させて免疫用抗原を合成し、同一ロットの抗原を複数回免疫すると、免疫応答が低下した。水中でパラジウム錯体のNMRシグナルを追跡した結果、1週間程度でパラジウム錯体が配位子交換を起こし、抗原決定基の構造が変化していることが示唆された。そこで、この免疫用抗原を免疫する直前に再合成して使用すると、順調に抗体価が上昇することがわかった。これまでパラジウム錯体に対して直接モノクローナル抗体を作製することは困難であったため、ロジウム錯体を免疫して得られたモノクローナル抗体が同様の配位子を有するパラジウム錯体に結合する特性を利用して機能性触媒を作製してきたが、今回の研究により直接的にパラジウム錯体認識抗体を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遷移金属錯体に結合するモノクローナル抗体、並びに不斉触媒に使用される配位子のキラルを識別するモノクローナル抗体の作製に成功している。これから順次、遷移金属錯体が関与する触媒反応をモニターし、抗体存在下、非存在下での生成物を解析・比較することにより、明確に抗体タンパク質が遷移金属錯体に結合することによって誘起される反応場の影響を評価することが可能になると考えられる。 本新学術領域の他の研究グループとの共同研究もスタートした。「研究実績の概要」には記載していない内容として、A02班 松永先生との共同研究において、キラル認識タンパク質作製による新たな第二配位圏創成の研究について、既に松永先生よりスピロジカルボン酸の光学異性体を送付いただき、当研究グループにおいてスピロ化合物のキラルを識別できるモノクローナル抗体を得ている。A03班 荘司先生との共同研究では、タンパク質-補因子複合体であるP450 Spαのサンプルを合成高分子に導入することでゲル中で触媒反応が進むことを確認した。これらの共同研究は平成28年度内、並びに平成29年度初めの学会等で成果発表をする段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作製した種々のモノクローナル抗体を利用して、様々な触媒反応に使用する。さらに今年度は、九大久枝グループとの共同研究も加えて、新しい不斉反応場となる抗体-遷移金属錯体を創製する。また、高分子モノリスも活用して、抗体と遷移金属錯体との複合体を親水性高分子担体に固定し、簡便に反応系から触媒と生成物を分別できる不均一触媒も合成する。
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Research Products
(24 results)