2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
15H05811
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉野目 道紀 京都大学, 工学研究科, 教授 (60252483)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 不斉合成 / 高分子合成 / 高分子機能 / キラル高分子 / 高分子触媒 / 重合後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、極めて剛直ならせん構造を有するポリキノキサリンのキラルらせん骨格上に様々な触媒活性部位をペンダントとして配する分子デザインにより、従来より顕著に高い触媒活性、選択性、再利用効率を与える新キラル触媒の創製を行うことを目的としている。本研究の開始にあたり、らせん骨格のキラリティを誘起するためのキラル側鎖の構造最適化、様々な触媒活性ペンダントの導入を容易にする重合後修飾のための分子デザインを行った。キラル側鎖の構造最適化においては特に、ポリキノキサリン骨格のらせん構造の大きな特徴である「溶媒効果によるらせん反転」をできる限り抑制するための検討を行った。その結果、エーテル酸素原子を複数含むキラル側鎖が優れていることを見出した。さらに、芳香環を有するキラル側鎖が、従来と同程度のらせん誘起能力を示しながらも溶媒効果によるらせん反転を示さないことも明らかとなった。また、芳香環上にハロゲン原子やボロニル基を有する1,2-ジイソシアノベンゼン誘導体をモノマーとする重合を行うことで、これらの反応性官能基をらせん骨格上に有するポリキノキサリンが効率的に得られることを見出した。これらの反応性官能基を有するポリキノキサリンに対し、鈴木ー宮浦クロスカップリングを行うことで、触媒活性を有する官能基を容易に導入することができた。この重合後修飾法を利用することにより、3-アミノピリジル基や2,2'-ビピリジル基を有するポリキノキサリンを合成し、その触媒反応への利用を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに合成してきたポリキノキサリンのキラリティの動的性質は、このらせん高分子骨格の大きな特徴であったが、特定の反応条件におけるらせんキラリティの予測を困難なものにするなど、本研究遂行に際しては必ずしも最適なものではなかった。様々なキラル側鎖を導入して、様々な溶媒中で円偏光二色性スペクトルの測定を行った結果、(S)-(1-methoxyprop-2-yloxy)methyl基を有するポリキノキサリンが、適していることを見出した。また、1-phenylethylalcoholから誘導される(S)-1-phenylethoxymethyl側鎖を有するポリキノキサリンも、検討したすべての溶媒中で右巻きらせん構造を取ることが明らかとなった。いずれにキラル置換基も入手容易なキラル化合物を出発原料としているため、今後本研究において必要な非動的らせん構造が予想以上に速やかに決定できた。 また、重合後修飾による触媒活性ペンダント部位の導入に基づいた高分子触媒合成法開発も、予想以上に順調に進行し、すでに実際の不斉反応に用いることが可能な二つの高分子触媒を合成することができた。単なる合成法の確立にとどまらず、その一つの4-アミノピリジル基を有するポリキノキサリンは、不斉求核触媒反応において、極めて高い触媒活性と90%eeを超える高い不斉収率を与えることをすでに見出している。このように、本年度、本研究計画は当初の計画以上に進展したと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度前半においては当初の研究計画に基づき、平成27年度において見出した高分子構造に関する知見を確実なものとし、重合後修飾による様々な官能基の導入を検討する。 また、平成28年度後半においては、上記によって合成したポリキノキサリンを様々な不斉反応に用いて、従来の低分子キラル触媒を上回る選択性や反応活性の達成について検討を行う。特に、H27年度においてすでに合成に成功し、高い触媒活性と不斉収率を示した4-アミノピリジル基を有するポリキノキサリンの構造最適化を進め、不斉有機触媒反応の開発を行う。
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Research Products
(23 results)