2018 Fiscal Year Annual Research Report
Design and Creation of New Chiral Reaction Environment Utilizing Helical Macromolecular Architectures
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
15H05811
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉野目 道紀 京都大学, 工学研究科, 教授 (60252483)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 不斉触媒反応 / キラル溶媒 / 不斉クロスカップリング / らせん高分子 / キラル配位子 / 高分子触媒 / リモネン / 不斉転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究においては、高分子構造中に一切のキラル置換基を持たないらせん高分子に、キラル有機溶媒中で完全な右巻き、あるいは左巻き構造が誘起され、これを触媒として用いることで溶媒キラリティを唯一の不斉源とする不斉触媒反応を確立したので報告する。 アキラルなプロポキシメチル基を側鎖に有するPQX40-1000量体を合成し、種々のキラル溶媒中に溶解して円偏光二色性スペクトルによりらせん誘起効率を観測した。リモネンを溶媒とした時、最も効率的ならせん誘起が観測され、120量体以上のPQXを(R)-リモネンに溶解した時、99% se以上のらせん方向過剰率で右巻きらせん構造が誘起された。ポリ(へキシルイソシアナート)が2-メチル1-クロロブタン中で5% se以下の不斉誘起を示すことが知られているが、PQXはこれに比べてはるかに効果的なキラル溶媒からの不斉転写効率を示した。 配位性ユニットをランダム共重合によって導入したPQXphosを合成し、不斉鈴木-宮浦反応に用いた。PQXphosはTHF中の反応においてはラセミ体のクロスカップリング生成物を与えた。しかしながら、PQXphosを(R)-および(S)-リモネンを溶媒としてカップリング反応を行なったところ、98% eeのエナンチオ選択性でそれぞれ(S)-および(R)-体の生成物を与えた。様々な対照実験の結果から、リモネンは反応中心であるパラジウムに配位することではなく、高分子主鎖と相互作用することでキラル反応場構築に寄与していることが示された。この反応系はキラル溶媒をキラル源とする初めての不斉反応であり、安価に入手できるキラル化合物との非共有結合性分子相互作用によって1段階で不斉転写を行うことができるため、今後実践的な触媒的不斉合成反応への展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においてはキラル置換基を共有結合により導入し、らせん高分子主鎖にキラリティを誘起する計画であったが、この方法は高価なキラル2級アルコールを出発原料とし、しかも多段階の合成が必要であった。今年度見出した新たなポリマー構造はキラル置換基を一切含んでおらず、安価なプロピルアルコールを原料とすることができ、安価な光学活性リモネンを反応溶媒とすることで、非共有結合性分子相互作用によって完全ならせんきらりティー誘起を実現できる。世界に先駆けてキラル溶媒を不斉源とする不斉反応を実現できたこと、実践的な利用を可能にするらせん高分子システムを開発できたこと、を理由として当初の計画以上に研究が進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出したキラル溶媒を不斉源とする触媒反応システムを他の不斉触媒反応に拡張する。また、糖やアミノ酸、テルペン類等の他の安価なキラル化合物による不斉有機の可能性についても検討する。一方で、らせん高分子を触媒とする新しい不斉反応の開発に取り組む。特に、不斉炭素ー炭素結合形成反応、および不斉水素添加反応を中心に検討を進める。
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Research Products
(12 results)