2017 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノ観測から制約する核-マントルの化学組成
Project Area | Interaction and Coevolution of the Core and Mantle: Toward Integrated Deep Earth Science |
Project/Area Number |
15H05833
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 教授 (20503858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山野 誠 東京大学, 地震研究所, 教授 (60191368)
飯塚 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70614569)
渡辺 寛子 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (70633527)
三井 唯夫 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (20283864)
榎本 三四郎 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員科学研究員 (90400225)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 地球ニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国が地球内部放射性元素起源のニュートリノ(地球ニュートリノ)の検出に、世界に先駆けて成功してから、10年余が経ち、データ蓄積量が地球深部における放射性元素の直接観測が可能なレベルに達している。一方、マントル内の主要な熱源である放射性元素の種類と量は未だに分かっておらず、核-マントルの熱進化の理解が進んでいない。本研究では巨大反電子ニュートリノ検出器(KamLAND)近傍の地球ニュートリノ流量モデリングの精度を地球科学的アプローチから向上させ、期間内に蓄積量が倍加する地球ニュートリノ観測データと合わせてマントル中のウラン、トリウム濃度を決定する。また、革新的新技術である到来方向検知型ニュートリノ検出器の開発を推進し、長期的に世界をリードする基盤を形成する。
そのために本研究では以下の方法を組み合わせることで、マントル中のウラン、トリウム濃度を精度よく決定する。①日本列島の地殻を構成する岩石とその組成を明らかにし、地殻に由来するKamLAND近傍の地球ニュートリノ流量を精度よくモデリングする。このために、地殻深部・上部マントル由来の岩石試料の化学分析、ボーリング孔温度データの整理と解析による地下温度構造モデリングを行い、その結果を、地震波速度構造データと組み合わせることにより、島弧地殻の主要~微量元素組成の推定を行った。②KamLANDを安定的に稼働し、そのデータを最大限いかすために、地球ニュートリノ観測の背景ノイズの理解、検出器由来の系統誤差の低減を行った。更に長期的展望も視野に入れ、方向検知型地球ニュートリノ検出技術開発をプロトタイプ検出器を製作し、地球深部のウラン、トリウム分布のイメージングの観測精度の見積もりと実機搭載に向けた検出器のデザインを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は北米プレート上の下部地殻の断面が露頭として現れている日高変成帯の岩石試料を100個分析することを計画していたが、これを実施することで、岩石試料の分析結果を拡充し、28年度にも実施した地震波トモグラフィから得られる地殻浅部構造の情報及び、地震波速度を活用することで、日本島弧地殻の岩石組成モデルの高精度化を行った。また28年度までに得られた熱流量分布を、地殻内地震の下限深度、地磁気異常の解析による磁化層の下限深度等の情報と組み合わせて地下温度構造を推定し、地震波速度構造と元素組成を結びつけるための基礎データとした。これらを地球ニュートリノの実測データと組み合わせ、マントル内部のウラン、トリウム濃度を地球ニュートリノ観測から決定する手法を確立させ、濃度の見積もりの高精度化が可能であることを実証した。28年度に実施したKamLANDの外水槽増倍管の交換後に蓄積したデータを用いてKamLANDの感度が向上したことを確認した。方向到来検知型ニュートリノ検出器開発については、プロトタイプを完成させ、30年度に中性子線源を用いたプロトタイプ検出器の検証を行うための機器開発が終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度以降は、合計500個の岩石試料の分析結果を組み合わせて、主要元素と微量元素組成の間の相関関係を見出し、トモグラフィから得られる地殻浅部構造の情報及び、地震波速度を活用することで、日本島弧地殻の岩石組成モデルを完成させる。また29年度までに得られた地震波速度構造と元素組成を結びつけるための基礎データを拡充し、地殻内の放射性発熱量や熱伝導率の分布の高精度化を行うことで、地下温度構造より、地球物理・岩石学のデータと最も整合的な、島弧地殻内の温度とウラン、トリウムの分布を得る。これらを地球ニュートリノの実測データと組み合わせ、マントル内部のウラン、トリウム濃度を地球ニュートリノ観測から決定する。開発した手法をBorexino近傍の地球ニュートリノ流量モデリングに適用し、比較を行う。方向到来検知型ニュートリノ検出器開発については、プロトタイプを完成させ、ミューオンや放射線源を用いた実測値を用い、反ニュートリノ到来方向測定の測定感度を求め、中性子線源を用いたプロトタイプ検出器の検証を行い、高統計で到来方向測定の感度を求める。 これまでの実測による反ニュートリノ到来方向測定感度に基づいたシミュレーションによって、地球深部のウラン、トリウム分布の3次元イメージングの観測精度の見積もりと検出器のデザインを完成させる。
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Research Products
(6 results)