2018 Fiscal Year Annual Research Report
平面多環芳香族分子の生体分子複合化に基づいた新機能創製
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
15H05839
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
垣内 史敏 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70252591)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ルテニウム触媒 / 炭素-水素結合切断 / 炭素-酸素結合切断 / アリールボロン酸エステル / 芳香族ケトン / 多環芳香族炭化水素 / アリール化反応 / クロスカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナノグラフェン構造をもつ多環芳香族炭化水素(PAH)の薬理活性物質として標的生体分子の効率的な捕捉に利用する2つの新規機能創製を目指して研究を行っている。これまでの検討では、アントラキノンの2-位にヒドロキシメチレン基へ薬理活性物質を導入することを目指して検討を行っていたが、目的のテトラアリール体の合成が困難であった。そこで、基質を1-メトキシアントラキノンに変更し、C-O結合のアリール化により薬理活性物質と結合できる官能基をもつアリール基を導入した後に、C-H結合のアリール化を行うことによりテトラアリールアントラキノンの合成を行った。4位にアセタール部位をもつアリールボロン酸エステルをアリール化剤として用い、1-メトキシアントラキノンとの反応により薬剤との連結部位をもつ1-アリーアントラキノンを合成した。次いで、3つのオルト位C-H結合のアリール化を4-ヘキシルフェニルボロン酸エステルとのカップリングにより達成した。さらに、テトラアリールアントラキノンとメチルリチウムとの反応によりジオールへ変換した後、脱水反応によりジメチリデン体を得た。脱水素化剤に塩化鉄を用いたScholl反応によりメチリデン部位と芳香環を結合させ、目的のテトラベンゾコロネン型分子を合成することに成功した。 合成した化合物の1H NMRスペクトルにおいて、芳香環領域のピークは室温ではかなりブロードにングしていたが、測定温度を120 °Cとしたところピークがシャープになった。このことから、合成した分子は溶液中で強く分子間相互作用をしていることが示唆された。合成経路が確立できたので、化合物の大量合成を行うこととDMSOなどの極性溶媒への溶解性を向上させる置換基をもつ分子の合成を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本新学術領域A01班のメンバーのうち、様々な生理活性物質の合成を行っている研究者との共同研究において、薬剤に多く見られるアミノ基を導入できる官能基を芳香環上に結合させたアリール基の導入を行うことが、本研究目標にとっては有効であるという作業仮説のもと研究を進めている。具体的には、合成容易な1-メトキシアントラキノンと4位にアセタール部位をもつアリールボロン酸エステルを、ルテニウム触媒存在下でカップリングさせ、薬剤との連結部位をもつ1-アリーアントラキノンを合成した。テトラアントラキノンへの変換は、ルテニウム触媒を用いた3つのオルト位C-H結合と4-ヘキシルフェニルボロン酸エステルとのカップリングにより達成した。得られたテトラアリールアントラキノンとメチルリチウムとの反応によりカルボニル基をジオールへ変換した後、脱水反応によりジメチリデン体へと変換させた。メチリデン部位とテトラアリール部位との酸化的環化反応は、塩化鉄を用いたScholl反応により達成し、薬剤との連結部位をもつテトラベンゾコロネン型分子を合成した。合成した化合物の溶液中での分子間相互作用の状態を知るため、温度可変プロトンNMRスペクトルを測定した。その結果、室温付近では芳香族領域のピークはブロードニングしていたが、測定温度を120 °Cまで上昇させるとピークがシャープになったことから、分子間相互作用により自己集積化していることが確かめられ、合成した分子が目的の性質を有していることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、目的の骨格をもつ分子を得るための合成経路を確立することに重点をおいて検討したため、有機溶媒への溶解度が高いヘキシル基をもつ4-ヘキシルフェニルボロン酸エステルを用いてテトラベンゾコロネン型分子を合成した。今後は、DMSOなどの極性溶媒や水系溶媒への溶解性を分子に持たすことを目指して、4位にオリゴエチレングリコール部位をもつアリールボロン酸エステルとのカップリングを行い、合成した分子の高極性溶媒への溶解度についての知見を得る。さらに、アセタール部位の官能基変換により薬剤と結合させることを目指す。目的化合物の合成が達成できたら、それを用いて細胞毒性試験を本新学術領域のA01班の研究者との共同研究により行う。そこで得られた結果を詳細に検討し、より高い活性を発現させるための官能基の導入の検討や、問題点の解決を行う。
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Research Products
(27 results)