2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
15H05841
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中田 雅久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50198131)
|
Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 有機化学 / 生物活性 / 反応集積化 / 中分子 / 不斉触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
コチレニンAのA環フラグメント合成への活用を目指し、α-アルキリデン-β-ケトホスホネートの触媒的不斉向山‐マイケル反応、α-ジアゾ-α-シリルアセテートの触媒的不斉分子内シクロプロパン化を開発した。C環フラグメントの合成はα-ジアゾ-β-ケトエステルの触媒的不斉分子内シクロプロパン化(CAIMCP)により工程数を減らすことに成功した。また、エポキシアルデヒドとグルコース由来のヒドロキシケトンのカップリングによりコチレニンAの糖部分の骨格構築に成功し、末端エポキシドの構築を検討中である。フラグメントのフロー合成に向けて固定化触媒を用いたα-ジアゾ-β-ケトスルホンのCAIMCPを検討し、96%で84% eeの生成物を得た。 ブルセアンチンの合成に向けた触媒的不斉分子内連続環化はキラルな新規NHC-Au(I)錯体を用いた場合、目的生成物を高エナンチオ選択的に与えたが、より短工程で合成可能な別の基質では良い結果を与えず、市販のホスフィン配位子を用いると86% eeの生成物を高収率で与えることを見出した。NHC配位子の改良を行うとともに合成研究を進めている。 ケラマフィジンBの効率的不斉合成のためのフロー合成について、京大院工の永木博士と共同研究を行った。その結果、ケラマフィジンBの骨格構築に必要な基質の合成がバッチ法では収率2%であったが、フロー法では79%になることを見出した。 トランス縮環した連続する全炭素四級不斉中心と三級不斉中心を構築する触媒的不斉分子内マイケル反応を開発した。この反応により得た化合物から分子内ディールス・アルダー反応を経由してアティサン骨格の立体選択的構築に成功した。 神経成長因子合成促進剤scabronine類、κ-オピオイド選択的アゴニストerinacine Eおよびそれらの中分子誘導体の高効率な合成法を開発した。バイオアッセイを検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コチレニンAの合成においては、各フラグメントの合成法、A環、C環フラグメントのカップリング法、A環官能基の立体選択的導入法を確立した。ピナコールカップリングによるB環構築は立体選択性に問題があったため、メチルケトンの分子内アルケニル化、水酸基導入、ヒドロキシケントンの立体選択的還元による構築に方針を変更し検討中である。糖部分はエポキシアルデヒドとグルコース由来のヒドロキシケトンのカップリングによる合成法を確立し、末端エポキシド構築も問題がないと思われるので、糖鎖フラグメントの合成とコチレニンAの合成は年内に達成可能と予測している。A環、C環フラグメントのカップリングにおいてスズヒドリドを大量に必要とするので、代替法の開発を検討中である。固定化触媒を用いるCAIMCPはフロー合成への移行を検討中である。 ブルセアンチンの合成においては、エナンチオ選択的連続環化法を確立した。その過程でジシアノ基あるいはシアノ基のケトンへの変換法を確立する必要が生じたため検討中である。キラルな新規NHC-Au(I)錯体は固定化が可能であるので、フロー合成への展開を計画している。 ケラマフィジンBの合成においては、京大院工の永木博士と共同研究を行った結果、フロー合成による鍵工程の基質合成が行える見込みがついた。フロー合成を利用する全合成に利用可能な基質の合成を検討中である。 アティサン骨格の構築に繋がる分子内環化反応をもう一種類見出しており、光学活性な生成物を得る手法への展開を検討中である。 scabronine類、erinacine Eおよびそれらの中分子誘導体の高効率な合成法確立したので、細胞・動物を用いたバイオアッセイを共同研究中である。 以上のように、2016年度研究開始時に立案した研究計画は順調に進展しており、研究目的は概ね達成されている。国際ジャーナル誌に研究成果を報告し、今後も投稿予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
コチレニンAの合成においては、α-ジアゾ-β-ケトスルホンのCAIMCPとシアン化カリウムによるシクロプロパンの開環により得られるβ-ケトスルホンのα-ブロモケトンへの変換を簡略化する。β-ケトスルホンは理論上、二等量の一電子還元剤によりエノラートへ変換可能であり、その臭素化によりα-ブロモケトンに変換可能である。あるいはエノラートを安定なエノールエーテルの形で単離し、臭素化によりα-ブロモケトンへ変換できる。β-ケトスルホンは二ヨウ化サマリウムにより脱スルホン化できることを確認しているので、α-ブロモケトンへの変換条件を検討する。A環、C環フラグメントのカップリングにおいてスズヒドリドの代わりにホスホン酸ジエチルを用いる条件を検討する。 ブルセアンチンの合成においては、ジシアノ基あるいはシアノ基のケトンへの変換法を確立する。具体的には、シアノ基をシリルケテンイミンに変換し、過酸と反応させてケトンに誘導する手法を確立し、最終的にワンポットでの変換を目指す。全炭素四級不斉中心の構築法として、オキシメチルラジカルのアルケンへの付加による手法を確立する。キラルな新規NHC-Au(I)錯体は安定であるため、固定化とフロー合成への展開を検討する。 ケラマフィジンBの合成においては、エステルとアミドで二重に活性化されたアルケンの14員環の形成を伴う分子内ディールス・アルダー反応が進行することを確認しているので、全合成に利用可能な基質の合成をフロー合成を利用して行い、不斉触媒を用いる分子内ディールス・アルダー反応を検討する。 パラジウム触媒を用いた三環式トランス縮環生成物を与える分子内環化反応を見出しているので、アルカロイド骨格のエナンチオ選択的構築に繋がる手法として確立する。 scabronine類、erinacine Eおよびそれらの中分子誘導体のバイオアッセイを継続して研究する。
|
Research Products
(16 results)