2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
15H05858
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
芳賀 永 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (00292045)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 上皮細胞シート / ゲル基質 / アクトミオシン / 集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮組織は消化器,呼吸器など様々な器官の構築に欠かせない組織であり,実際,ほとんどの臓器・器官の3D構造は,上皮の折り畳みとして作られる.胚発生時における遺伝子の発現パターンなどの解析は進んでいるものの,多数の細胞が集団で運動し,3D構造を形成するメカニズムについてはほとんど未解明である.本研究は,培養細胞を用いて自律的に秩序のある3D構造を作り出すことで,形態形成の謎を解き明かすことを目的とする. 平成27年度では,細胞シートに生じる力と基質の変形をリアルタイムでイメージングした.細胞が出す力の発生源である収縮性アクトミオシンはアクチン繊維とII型ミオシンから構成され,II型ミオシンの軽鎖(MRLC)にはリン酸化部位が存在する.研究代表者は,MRLCのリン酸化によって細胞が出す力の大きさが変化することをこれまでに明らかにしている.そこで,MRLCがリン酸化すると蛍光を発するFRETプローブを上皮細胞(MDCK細胞)に強制発現させ,蛍光ライブイメージングを行うことで,細胞シートに生じる収縮力の時空間的変化とゲル基質の変形をリアルタイムで観察した.その結果,軟らかいコラーゲンゲル上で協働現象を示す上皮細胞集団では集団運動をけん引するリーダー細胞でMRLCのリン酸化の動的変化が顕著であることが明らかとなった. さらに,研究代表者はこれまでに,上皮細胞が3D構造を形成する際,培養基質であるマトリゲルが変形することを見出している.そこで,平成27年度では,粘性による効果を定量的に調べるために,シリコーンオイルを素材として,粘性を任意に変えることができるゲル基質を開発した.その結果,粘性の低いシリコーンオイルを用いることで上皮細胞シートが自律的に3D構造を構築することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では,研究実施計画をほぼすべて遂行し,さらに,当初は平成28年度に予定していた実験計画にも着手し,隣接細胞間に働く接触追随をもたらす機構の解明に着手することができた. マトリゲルにゲニピンを添加することで,培養基質の粘性を変化させ,形態形成にとって基質の弾性のみならず粘性が重要であるという知見を得ることができた.それらの研究成果を平成27年度内に原著論文として公表することができた. 平成28年度以降に計画していた接触追随に関する研究では,Integrin-β1,Marlinなど複数のターゲットタンパク質を見出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究実施計画をさらに推し進めるべく,現状よりも粘性の低いシリコーンオイルを用いて上皮シートの培養を行う.また,上皮シートの境界条件を制御することで,様々な3D構造が出現するかどうかについても調べる.得られた結果を井上グループの3Dバーテックスモデルに当てはめ,細胞シートの変形・回転運動をモデル化する. さらに,接触追随の分子機序について調べる.Integrin-β1,Marlinなどの発現をsiRNAでノックダウンし,シグナル経路の同定を行う.
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