2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Science of hybrid quantum systems |
Project/Area Number |
15H05869
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
山口 浩司 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 上席特別研究員 (60374071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本間 芳和 東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 教授 (30385512)
野村 政宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (10466857)
有江 隆之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80533017)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / ナノチューブ / グラフェン / 機械共振器 / 機械材料・材料力学 / フォノン |
Outline of Annual Research Achievements |
トップダウン構造を用いたフォノニック構造に関する研究では、核スピンと機械振動の結合動作を確認することに成功した。特に、機械振動周波数だけずれたサイドバンド位置に核磁気共鳴が確認され、量子マスター方程式を用いた理論計算との良い一致が見られた。また、二次元フォノニック結晶に加え、よりシンプルなナノワイヤー構造を工夫することで、指向性フォノン発生器として機能することを実証した。SiGe材料では、ハイブリッド量子系で重要となるフォノンのコヒーレンス長がSiよりも長く、室温においても弾道的フォノン輸送が起こることを確認した。光と表面フォノンの連性波である表面フォノンポラリトンによるコヒーレントな長距離エネルギー伝搬を示唆する実験結果を得た。 ボトムアップ構造を用いた研究に関しては、架橋CNT電子デバイスを製作し、AFM探針で変調しながら測定を行うことで、歪効果による電流制御の可能性を見出した。しかし、架橋構造が帯電により破壊されやすく、安定な計測には至らなかった。蛍光イメージング法によるCNTの熱伝導率計測に関しては、低温領域でCNTへの水吸着が不可避であったため、水吸着層がCNTに及ぼす歪効果の温度変化を計測して定式化する必要があり、熱伝導率の評価を行うまでには至らなかった。一方、ボトムアッププロセスによる同位体を用いたナノカーボンフォノニック結晶の研究では、同位体界面間の距離がフォノンの平均自由行程と同程度以下になると、グラフェンの熱抵抗が界面熱抵抗から予測される値以上に上昇することを明らかにした。フォノンが擬弾道的に輸送されている結果と考えられ、今後計算とあわせて検証を行う。また、歪みによる熱伝導の低下が、多結晶グラフェンだけでなく単結晶グラフェンにおいても見られることを確認した。ドメイン境界による熱抵抗ではなく、面内の不均一歪みが起因しているとが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トップダウン手法によるフォノニック結晶に関する研究では、今回スピン系とフォノン系との結合動作に対応するサイドバンド共鳴が確認されたことで、スピン・フォノンハイブリッド量子系を実現できる基盤が確立された。さらにナノワイヤーを用いた機械共振器の研究も順調に進捗し、本課題の大きな目標のひとつであるトップダウン・ボトムアップの融合素子の実現に向けた着実な進展が見られた。フォノニック結晶を用いたフォノン場制御に関する研究では、当初計画にあったSiに加え新たに検討したSiGeでも研究が順調に進展し、表面フォノンポラリトンによるエネルギー伝搬に関する研究も進んでおり、フォノンハイブリッド量子系により適した環境およびツールができつつある。フォトン班と連携した新たなテーマも推進し、本領域の趣旨に沿った活動が行われており、順調に進展していると言える。 一方、架橋CNT電子デバイスに関しては特徴的な結果を得るに至らず、また単一CNTの低温領域での熱電導度計測に至らなかった。しかしながら、ボトムアップによる同位体ナノカーボン超格子構造の研究に関しては、その作製法が確立し、熱伝導に与える影響を検証することに成功した。また歪みによる熱伝導低下がドメイン境界の熱抵抗に起因したものではなく、面内の不均一歪みによるものであることを明らかにした。これらの結果は電荷・フォノンのハイブリッド化実現に適用できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた他グループとの研究連携を活用し、異なる素励起(電荷/スピン・フォトン・フォノン)間のハイブリッド動作を目指した研究に重点をおいて推進する。 トップダウン構造においてはフォトンとフォノンのハイブリッド動作を目指したオプトメカニクスの研究を強化する。具体的には光の非線形性を活用したフォノンのスクイズド状態の抽出法の原理実証を行う。また、量子的な性質の出現が期待される高周波フォノニック結晶共振器の振動振幅の実空間解析を行い、各振動モードのエネルギー散逸過程を解明する。引き続きシミュレーションによる設計と構造作製を進め、フォノン場制御の効果を活かした物理制御を行う。また、表面フォノンポラリトンによるエネルギー伝搬に関する研究を重点的に推進する。フォトン班と連携した、周期ナノ構造を用いたフォノン場・フォトン場同時制御による量子ドット励起子の緩和制御に関する研究も引き続き推進する。 一方、ボトムアップ構造においては、架橋CNTを用いた研究は縮小し、ナノファイバの近接場によるCNTの量子状態制御の研究に重点を置いて進める。ナノ光ファイバに吸着させたCNTを用い、近接場光とCNTとの相互作用を調べる。近接場光によるCNTからのフォトルミネッセンスやラマン散乱光の発生を、CNTのカイラリティ及び近接場光の円偏光性によって制御することを目指す。これにより、フォトンーエキシトン、及びフォトンーフォノンの変換・スイッチングをミクロな空間で制御する技術を開拓する。さらに、同位体界面を面内にもつグラフェン機械共振器を用い、遅延効果を利用した共振特性の制御を検証する。ナノスケールでの界面評価を公募研究グループである安グループと行い、界面構造とフォノン伝導との関係を明らかにする。またグラフェン中の面外フォノンが熱伝導へ与える影響の解明を、電荷・スピン班の小林グループと連携して進める。
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Research Products
(130 results)