2018 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of novel concept for cancer diagnostics and therapeutics based on the systematic comprehension of cellular context in cancer
Project Area | Conquering cancer through neo-dimensional systems understanding |
Project/Area Number |
15H05908
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 講師 (50568326)
谷本 幸介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60611613)
玄 泰行 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (80596156)
村松 智輝 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (90732553)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | がん細胞文脈 / オミクス / がん代謝異常 / DR / がん悪性特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞文脈のシステム的統合理解による新たながん診断・治療概念の確立するために、 上皮間葉転換(EMT)、がん転移・浸潤性、オートファジー変調など種々の悪性特性が検証できるモデルがん細胞株を樹立した。膵臓がん細胞株Panc-1の皮下移植担がんマウスの循環血中から、循環腫瘍細胞(CTC)を分離してPanc-1-CTCと命名した。Panc1-CTCは、親株よりも高いin vitroでの移動浸潤能、in vivoでの腫瘍形成能を示した。網羅的遺伝子発現解析から、TGFBIがPanc-1-CTCにおいて有意に発現上昇し、TGFBIの過剰発現は細胞の移動・浸潤能を亢進させることを明らかにした。また、臨床検体の解析から、TGFBIは膵臓がんの治療標的ならびに予後予測バイオマーカー候補となる可能性が示された。 オートファジー、レドックス、抗アポトーシスに関与する遺伝子群を標的とするmiR-634を見出し、これをシーズに核酸抗がん薬開発の分子基盤構築を進めた。マウス皮膚化学発がんモデルにおいて、合成2本鎖miR-634を内包した軟膏製剤の塗布による顕著な抗腫瘍効果を確認し、GLP基準の前臨床試験を行うためのPOCを取得した。 また、卵巣がん細胞株を用いたオミクス解析から、細胞生存に必須な栄養源アミノ酸が、がん細胞ごとで異なっていることを明らかにした。グルタミン合成酵素活性が無い卵巣癌の一群を見出し、グルタミン枯渇による新たな卵巣がん個別化治療法の可能性を示した。 独自に樹立したリンパ節高転移口腔がん細胞株HOC313-LMを用いた766種FDA承認薬のスクリーニングから、強い増殖抑制能を示すMCG-P(ラボネーム)を同定した。ニワトリ胚を用いたin ovo実験系を構築して、MCG-Pの腫瘍抑制制御機構の解明とDRによる新たながん治療法の確立に向けた研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上皮間葉転換(EMT)、がん転移・浸潤性、オートファジー変調など種々の悪性特性が検証できるモデルがん細胞株を樹立し、それらを駆使したin vitro/in ovo/ in vivo解析とマルチオミクスデータ膵臓癌浸潤・転移機構に関与するTGFBIを同定し、さらに、臨床検体の解析から、TGFBIは膵臓がんの治療標的ならびに予後予測バイオマーカー候補となる可能性を示すことができた。 また、癌細胞文脈を構成するオートファジー、レドックス、抗アポトーシスなどの特性に関与する複数遺伝子群を標的とするmiR-634を見出し、これをシーズに核酸抗がん薬開発の分子基盤構築を進めた。マウス皮膚化学発がんモデルにおいて、合成2本鎖miR-634を内包した軟膏製剤の塗布による顕著な抗腫瘍効果を確認し、さらに、具体的なデータは秘匿情報の為に明示できないが、放射線・化学療法抵抗性のペット犬自然発症癌を対象にした治療試験においても効果が確認されている。このことは、当該新学術領域の基礎研究から抗癌核酸薬の強力な候補シーズが見出された言える成果でであり、人対象の臨床試験を目指したGLP基準の前臨床試験に着すべく計画中である。 さらに、卵巣がん細胞株を用いたオミクス解析から、細胞生存に必須な栄養源アミノ酸が、がん細胞ごとで異なっていることを明らかにした。グルタミン合成酵素活性が無い卵巣癌の一群を見出し、グルタミン枯渇による新たな卵巣がん個別化治療法の可能性を示すこともできた。 また、従来の方法では生物学的特性評価が難しかった血管新生と転移浸潤の可視化アッセイを可能とするニワトリ胚を用いたin ovo実験系を構築して、今回研究で見出された抗癌薬シーズの新たながん治療法の確立に向けた研究解析のシステムが整備され、がん細胞文脈のシステム的統合理解による新たながん診断・治療概念の確立の成果が一層期待できる。以上により、当該研究課題は、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究課題の成果達成を目指し、独自に確立した上皮間葉転換(EMT)、がん転移・浸潤性、オートファジー変調など種々の悪性特性が検証できるモデルがん細胞株を利用して研究を推進する。特に、核酸抗がん薬候補miR-634製剤のヒト対象臨床試験に向けての前臨床試験のデータ取得を目指す。 モデル細胞株や東京医科歯科大学疾患バイオリソースセンターを拠点に収集された症例検体を利用してオミクス解析、血清・細胞アミノ酸分析などを実施する。得られたオミクス解析データや機能的スクリーニングデータ、ならびにネットワーク解析などで得られる膨大な各種網羅的解析ビッグデータを、領域内計算科学者と連携して独自アルゴリズムを構築し、がんの細胞文脈システム変化プロファイルを解析する。これにより細胞文脈構成ネットワークとそれを駆動する関連分子を抽出し、遺伝統計学的解析や疫学的アプローチにより患者集団での意義づけやがん細胞文脈の違いによる新たながん層別化分類とそれに基づく新たながん個別化治療の概念の可能性を追究する。 さらに、がん細胞特異的な細胞文脈を構成分子候補データに基づいて、がん細胞株アッセイ系を構築し、既存化合物ライブラリーや上市薬ライブラリースクリーニングを実施し、特に後者スクリーニングにおいては細胞文脈特異的に抗腫瘍効果を認める候補を選出し、既承認薬再配置(DR)によるfast trackの実用化を目指す。さらに、in vitro/ in ovo/ in vivo検証モデル系を用いた機能的解析を行い未知のがん関連候補遺伝子群(セット)や関連シグナル・パスウェイなどについて、機能的な確認を行う。臨床症例を用いた多角的解析を実施してがん細胞文脈関連事象を理解し、がん細胞文脈のシステム的統合的理解を進めて文脈層別化という切り口から、高齢者がんや希少性難治癌の診断と治療の最適化方法の確立を目指す。
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Research Products
(23 results)