2016 Fiscal Year Annual Research Report
温度による行動制御の基盤となる快・不快情動生成機構の解明
Project Area | Integrative understanding of biological phenomena with temperature as a key theme |
Project/Area Number |
15H05934
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
南 雅文 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20243040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴崎 貢志 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20399554)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 環境 / 温度 / 情動 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経活動マーカーc-Fos発現を指標とした組織学的解析により、暑熱環境下(38℃)で神経活動が亢進することが示された脳領域のうち、c-Fos発現上昇が顕著であった視床室傍核について逆行性トレーサーを用いてc-Fos陽性細胞の投射先を検討したところ、視床室傍核c-Fos陽性細胞の多くが、側坐核および分界条床核に神経投射を送っていることが明らかとなった。前年度の研究で、暑熱環境下ノルアドレナリン遊離が亢進することが示された分界条床核について、インビボマイクロダイアリシス法を用いて寒冷環境(8℃)負荷の影響を検討したところ、寒冷環境によってもノルアドレナリンレベルが上昇することが明らかとなった。分界条床核に投射するノルアドレナリン神経の細胞体が存在する弧束核において暑熱環境負荷時にc-Fos陽性かつチロシン水酸化酵素(カテコラミン神経のマーカー酵素)陽性の神経細胞が観察された。暑熱環境下における場所嗜好性・嫌悪性に関わる脳領域を明らかにするために、2種のプレート温度に加え、気相温度を制御できる行動実験系を構築した。イボテン酸を用いた破壊実験により分界条床核の関与を検討したが、分界条床核破壊後に温度選択行動は変化しなかった。一方、温度センサー分子の機能解析では、従来、侵害熱センサー(52℃以上で活性化)として知られていたTRPV2が、メカノセンサーとしても機能するDual Functionを持っており、神経回路形成や損傷軸索再生過程に関与していることを見いだした。さらに、TRPV2活性化の分子機構の一端を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、c-Fos免疫染色と逆行性トレーサーを用いた組織学的解析により暑熱環境下で活性化する神経路の一端を明らかにしている。また、インビボマイクロダイアリシス法を用いた検討により寒冷環境によっても分界条床核内ノルアドレナリン遊離が亢進することを見いだしている。さらに、2種のプレート温度に加え、気相温度を制御できる行動実験系を確立し、脳局所破壊等と組み合わせることで温度行動に関与する脳部位を同定する実験を開始している。また、従来、温度センサーとして知られていたTRPV2が、メカノセンサーとしても機能することを見いだした。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
組織学的解析により暑熱環境下で活性化することが明らかとなった視床室傍核→側坐核経路および視床室傍核→分界条床核経路を光遺伝学的に操作することにより不快情動が惹起されるか否かを検討する。暑熱環境により活性化する神経細胞に特異的にチャネルロドプシン2あるいはアーキロドプシンを発現させるためc-Fosプロモーターを用いた発現系についても検討する。インビボマイクロダイアリシス法を用いた実験では、暑熱あるいは寒冷環境から室温環境に戻した際に快情動が惹起されるか否かを側坐核内ドパミン遊離を指標として検討するとともに、分界条床核内ノルアドレナリンと側坐核内ドパミンを同時計測することで環境変化に対する快・不快の情動応答をモニタリングすることを試みる。温度選択行動に関与する脳部位の同定については、分界条床核以外の脳部位の破壊実験や受容体拮抗薬等を用いたより選択的な抑制手法についても検討する。
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Research Products
(10 results)